人手不足とクラウディングアウトについて その2

さて次に人手不足についてなのだが、受注額が減少傾向にあるのに人手不足感は高いという状況の理由について調べてみた。

建設業就業者数の将来推計」という国交省所管のレポートによると、

現在、人手不足が顕著な専門技能者の高齢化が進み、数年後には退職で大幅に不足することが予想されるとのことだ。
(11ページのグラフ)


つまり、予想される数年後の技術者不足に備え、建設業者は今から型枠工・鉄筋工などの確保を進めている、ということがわかる。必ずしも、「今やる案件」をこなすために必要な人手が足りなくて集めている、というわけでもなさそうなのである。

実際の型枠工・鉄筋工の求人を見てみると、もちろん経験者優遇とあるが、けっこう未経験者も歓迎、しっかり指導しますと謳っている業者も多い。

建設業従事者の年齢構成を見ると、高度成長にあった1970年代の入職者が一番多く、これが現在50歳代前後である。
1980年代のバブル期入職者は少なく、グラフの谷を作っている。
こうした年齢構成のバランスの悪さゆえに、時期によって人材補充の要求が集中して起きることも考えられるわけだ。

つまり仮説としてはこうだ。

・昨今の建設業の人手不足は、復興需要による受注増の影響もあるとしても、数年後に予想される技能労働者の大量退職に備え、積極的に求人している結果ではないか。


そんな風にざっと調べてみた結果、冒頭に引用した

人手不足が深刻化し需給ギャップが縮小する現状では「公共投資の過度な拡大は、民需主導の成長を阻害する可能性がある」

という指摘は、ちょっと見方が狭すぎるか、あるいは財政支出を増やしたくないがための、「ためにする議論」に陥ってはいまいか?と感じるわけである。


大学で使った経済学の教科書でもお世話になった伊藤元重大センセーにたてつくつもりはないのだが、この問題は引き続き考えてみたい。