エコビジネスも悪くない その2

俺も最近知ったのだが、電気というのは、たくさん作れば作るほどよい、あまったらポイすればいいというものではない。需要量や送配電能力に見合った電力をきちんとコントロールして、ミリ単位でしかもリアルタイムに発電量を調節しなければならない。
もし重要を下回ったり、大幅に需要を上回るようなことがあれば、とたんに周波数に影響を与え、大停電をもたらす恐れがある。

参考:電気学会 周波数について


発電というのはたいへん難しい技術に支えられているのだ。


その点、太陽光パネルをはじめとした再生可能エネルギーというのは、コストを別にしても発電設備として非常にスジが悪いといわざるを得ない。

天気に左右されるし、自分で発電量をコントロールすることができないから、作ったら作りっぱなし、ほしいときにまるで役に立たない、ということがザラなのである。
電圧も周波数も安定しないから、つまりは非常に品質の悪い電気しか作れないのである。はっきりいって、そのままでは使い物にならない。


電力会社は法律で決められた以上、こういう質の悪い電気も黙って買い取る他はない。それで送電設備がパンクしては困るから、うまい事調節してなんとかやっているのが現状だ。

しかし、ついに悲鳴を上げた電力会社が買い取りの新規契約を中止するまでに至っているというのが現状だ。


A社のHPに、発電実績グラフがあるから見てみると、こうだ。


※チャチャ入れコメントはブログ主


一般的に4〜5月というのは最も電力需要の低い季節だが、この時期にピークが来ている。需要の多い夏場はもちろん発電量も伸びるが、あまり暑いと効率が下がるのだろう、春ほどではないし、しかも2014年実績はダダ下がりだったようである。
冬はもちろん、開店休業状態


つまり必要なときにまるで頼りにならず、全然いらない春先にフル稼動して電力会社にいらぬプレッシャーをかけるという、この季節変動だけを見てもまさに有り難迷惑この上なかろうという実態が透けて見えてくる。


こんなヤバいグラフ、隠しておけばいいのにと老婆心ながら思う。


このグラフを見る限り、太陽光パネルによる発電事業は、地域の電力供給に貢献するどころか、ほとんど無用の長物、むしろ安定供給を阻害していはしまいかという疑念をもたざるを得ないのである。



まだある。

エコビジネスも悪くない その1

「dot.」というサイト(AERAの電子版?つまりアカヒの系列)に、こんな記事が載っていた。

■悔しさバネに30年 手製の発電所作った女性


 もう国や電力会社だけにはまかせておけない。将来のエネルギー供給を担う市民の取り組みを追った。

 その冬の日の宝塚の空は、どこまでも晴れ渡っていた。市内の北部、中心街から車で30分ほど走った山間部にある耕作放棄地。非営利型株式会社「○○発電」は2012年12月、ここに手作りの太陽光発電を完成させた。

http://dot.asahi.com/news/domestic/2015012800120.html


「手製の発電所とかいうから、あたかも自転車かなんかをギッコンバッコン漕いだり、水車小屋かなんかでも作ってつつましくやってるのかと一瞬錯覚させるが、何のことはない、ただの太陽電池パネルを使った小規模な発電事業者のお話である。

この記事、とにかくつっこみどころが盛りだくさん過ぎてもはやどこからつっこんでいいのか迷うほどのデカい釣り針なのだが、ヒマなので釣られてみようかと思う。



さて。

1個20キロはある敷石150個を一つ一つ並べ、その上に51枚の太陽光パネルを敷き詰める。パネル同士を固定し、配線をつなげば完成だ。パネルの総面積は約100平方メートル。要したのは5時間だった。

 同社代表取締役の■■さんが、専用モニターをのぞき込むと、液晶画面に発電量を表す数字が並んだ。パネルに降り注いだ太陽光が、確かに電気に変わったことを示していた。それを見て、思わず叫んだ。

「見ろっ、やったった。(自分たちで)電気を作ったわ


言っとくが電気を作ったのは太陽光パネルを作った業者さんであり、パネルは紛うかたなき工業製品である。
あんた方は組み立てしただけでしょーが。これをもって「手作り」などというのは、筆者の日本語能力を疑わざるを得ない。
普通、ラジコンカーを組み立てるのを手作りとは言わない。

 京都精華大学の階段教室。18歳の■■さんは期待に胸を膨らませていた。大学生になって初めての授業が始まる。「自然科学概論」。教壇に立った教員のXXXXさんは、おもむろに蛍光灯を消した。薄暗くなった教室でXXさんは学生に言った。
「私は原発に反対しているので、昼間に余分な電気は使いません」


精華大ねぇ。。。よくは知らないけど、京都のアート系大学か。偏差値は。。まあいいや。
それにしてもちょっと昔のことのようだけど、相当なサヨク汚染が進んでるらしき悪寒を覚える。まあ、京都ってもともとそっち色は強いしね。

しかし、こんなのにオルグされちゃって、以来お花畑人生を歩み続けてきたこの女社長さんも相当なもんだとは思うけど。

悔しさを行動に変えたのが、■■さんの30年間だった。市民団体で、高額な講演料にもためらわず一流の研究者を呼んで学び、原発反対運動があればどこへでも駆けつけた。共同購入の仕組みを使って、原発立地地域の漁業者や農家の産物を買って支援した。その延長線上に、ようやく自分たちの発電所が完成した。そうした時を経たからこそ、「見ろっ、やったった」というあの叫びが出たのである。


「高額な講演料」というが、この女社長氏が自弁したわけではあるまい。
それに、原発地域の農漁業者の産物を購入して支援した、ともいうが、何しろこの人たち、市に放射線量測定器を購入させて給食を定期的に測定させるほどなのだが、ちゃんと食ったんだろうな?

ま、それはいいけど、なんだか昔からずっとこつこつ積み上げて、ようやくここまで漕ぎつけた、みたいな美談に仕立てているが、ウソとはいわんが相当盛ってるな。


この発電施設を作った、「非営利型株式会社・○○発電」という業者(以下A社)のホームページに沿革があるのだが、


1981年に団体を設立してから30年、ほとんどこれといった実績もないのに、2011年の福島原発事故をきっかけに一気に具体的な動きが始まっていることがわかる。

なぜか。答えは簡単で、2011年3月11日、震災のドサクサに紛れて閣議決定され、同年8月に菅直人内閣が自らの退陣と引き換えに強引に成立させた「再生エネルギー特別措置法」によって、再エネ発電事業が「確実に儲かるしくみ」になったからである。


この法律の最大のポイントは以下2点。

  • 再生可能エネルギーから作った電気を、国が定めた単価で、一定の期間、電力会社が買い取ることを義務化する(全量固定買取)
  • この際の買取に必要な費用は、電気の使用量に応じて全国民(個人、事業者)が負担する。


つまり、太陽光パネルなどを使って作った電気は、需要と関係なく作ったら作っただけおカネに変えることができるようになったわけである。しかもその買取価格は、驚きの最大42円/KWhである。


この買取価格がどう驚きかというと、試しに東電の家庭用電力料金表の従量価格部分で比較してみよう。


一般の小売価格は、1kWhあたり19円程度が相場なようである。


つまり、「再エネ法」による買取制度は、小売の倍以上の値段で売ることができるわけだ。こ、これはオイシイ。。。


A社は、この法案が成立するやいなや即座にパネル設置に動き、2012年12月には第一号発電所を稼動しているから、この最高条件が適用されている。たしかに、30年もチャンスを待ち続けた意味はあったといえる。


で、当然逆ザヤが発生するわけだが、その差額はどうすんのかというと、もちろん「再エネ法」に定められたとおり、電力を使用するすべての個人・法人から「再エネ発電賦課金」として広く浅く徴収されている。ほぼ税金みたいなもんである。



要するにこのA社は、再エネ法というオイシイしくみができたのでこれ幸いと乗っかって、うまくやっているに過ぎない。再エネ賦課金制度によって全国民から集められたお金をチューチュー吸い取っているわけである。


このビジネス感覚、行動力は評価していい。実際、このオイシイ話を逃すまいと、目ざとい人たちは各地の山林などを切り開いたり借りたりして、個人で太陽光パネルを設置するのが一時期ブーム(今もかな?)になっていた。


ああ、俺もやっとけばよかったかも。。。いや、もとい。



別に法に触れているわけではない(どころか国が奨励している)ので、うまく制度を利用してビジネスするのはなんら問題ない。

ただ問題は、こういう再エネ事業者たちが得ている利益が、実際にその生み出す価値に見合ったものかどうかという点である。


長くなったので続く。

エコビジネスも悪くない その4

掘るほどに面白そうなネタがゴロゴロしてるので、つい長々と書いてしまった。
念のため言っておくが、別に俺はこの事業者をクサそうというつもりで書いているわけではない。
何か妙な美談みたいに脚色されてるのは「それって違くね?」とは思うが、むしろ普通のビジネスとしてみれば、かなり上手くやっている成功例といえ、参考にすべきことが多い。



とはいえ最後に一つだけ、気になる点を指摘しておきたい。


このようなエコビジネスを展開する人たち(もちろんTS社だけでなく、大小それこそ星の数ほどいるだろう)が稼いだカネは、一体どこにゆくのだろうという疑問である。


まあケースバイケースだろうし、ここからは全くの想像であるが、こうしたカネの多くあるいは一部は、より大きなエコ・リベラル系(そして得てして反日的な)団体の活動資金に回っているのではないかと懸念する。

そう、平日の昼間から原発デモをやったり、官庁街や辺野古テント張って何日も居座るような連中のことである。


どう考えてもあんなことしてて生活できるわけがないので、必ず何かしらの資金源、スポンサーがいるはずなのである。


全く根拠はないが、エコビジネスで得た収益の一部がそうした活動を支援する団体への寄付金などになってはいないだろうか。


なぜそう思うかというと、A社は「非営利型株式会社」という資格の法人だからである。
非営利型株式会社?なんだそりゃ、と思って調べてみたら、

利益から法定準備金や任意積立金などの内部留保を除いた配当可能利益の全額に相当する額を、社外留保にあたる新たな任意積立金である社会貢献積立金に積み立てて経営者がこれを三者へ分配するとともに、毎期の利益の蓄積である残余財産も第三者へ分配する。これが「非営利型株式会社」である。

http://www.fujita-kaishahoumu.com/youshiki/220918hieirikk.doc

分かりにくいが、要するに一般の営利企業との違いは、得た利益を配当や給料で分配するのではなく、「公益性のある社会貢献活動」の資金として提供することを目的とした法人なのである。


つまりA社は、「非営利型株式会社」として名乗る以上、何らかの社会貢献をしたり、それを謳う団体等に寄付するための資金を稼ぐことが活動の目的であることが明白なのである。
まあ実態としてどれほどできているかはわからないが、少なくともA社の人たちは、決して私腹を肥やそうとか、カネ儲けしようなどというつもりでやっていないことは間違いない。


ただし心配なのは、何か寄付などをするとしても、その支出先である。


例えばこのA社のホームページを見ても、かの有名なグリーンピースとの繋がりを示す記事が掲載されている。

グリーンピースといえば、最近ではナスカの地上絵に土足で踏み込んで散々に遺跡を毀損した挙句、政治的アピールをしたことでも名を上げた、典型的なエコテロリスト団体である。

せっかく稼いだおカネが、こういう反社会的団体などに流されていないことを切に祈るばかりである。


もちろん、自分で働いて付加価値を生み出し、その正当な対価として得たカネならば、それをどう使おうが何ら問題はない(いや、テロリストはいかんけど…)
しかし、このTS社の事例を見る限り、その事業を支えているのはほぼ税金か、制度によって保証されたそれに準ずるものなのである。

もとはといえば税金なわけだから、真に日本国民(「市民」じゃない、日本国民ね)のために活動する団体の資金となってくれればと願う。


じゃあ収益がどういう風に使われているのか調べればいいじゃないか、という話なのだが、残念ながらそこがよくあるNPO法人」との最大の違いである。

先ほどのサイトの説明によると、

3.公開性・透明性
会社の利益はNPO法人と異なり、詳細は一般公開されません。
しかし、非営利株式会社であれば、「ある程度」の資産、利益の使途を公開することで透明性を保つ。

http://www.fujita-kaishahoumu.com/youshiki/220918hieirikk.doc

NPO法人は税制上の優遇を受ける代わり、財務の公開など厳しい規制がはめられている(たとえばこんなふうに)。しかし、非営利型株式会社にはその縛りがほぼないのである。


つまり得た利益をどう使おうと(非営利の定義に沿う限り)、非営利型株式会社はその内容を基本的に公開する必要はないので、チェックのしようがないのである。これはまさに、事業者の善意に期待するほかない。


繰り返すが、対価に見合った価値を生み出して利益を得たならば、それをどう使おうが一切非難の云われはない。しかし、ことに再エネ事業が生み出すものは付加価値どころか社会の負担を余計増すばかり、敢えて言おう、ゴミを垂れ流す行為に等しい。だいたい、あの真っ黒なパネル自体がひどい景観破壊だ。


で、そのゴミ処理費用として税金や全国民の負担する賦課金が使われ、その一部がさらに場合によってはエコテロリストや似非サヨクなどの活動資金になりかねない、という可能性を危惧しているのである。


してみれば、このビジネスモデルを可能とする「再エネ法」を実現した菅内閣は、似非サヨクエコテロリストたちにとっては相当に美味しいシノギの口を提供した功労者であったのかもしれない。


それにしても、もとはノホホンとした記事から、いろいろ調べてみるだけでこれほど面白そうなネタが浮かび上がってくるとは思わなかった。


まさにプロ市民、おそるべし!!

エコノミストたちの「認知的不協和」

6夜に亘って自民党が掲げる「アベノミクスの成果」に偏執狂的なつっこみを入れてきたので、最後にひとつまとめを入れようかと思ってたけど、なんかどうでも良くなってきたのでやめた。


ところで、面白い出来事があった。

■またまたエコノミストの予測外れる GDP下方修正発表に記者からどよめき

2014年7〜9月期の国内総生産GDP)改定値が、物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比0.5%減、年率換算で1.9%減となり、速報値(前期比0.4%減、年率1.6%減)から下方修正された。

GDPショック」といわれた11月の速報値の発表以降に、改定値を予測していた民間シンクタンクの多くが上方修正するとみていただけに、またもやその予想は覆された。
【JCASTニュース 2014/12/ 8 18:50】


12月8日、7-9月期のGDP改定値が発表されたのだが、11月17日に公表された速報値よりも下方修正という結果となった。


しかしこの公表の直前では、「7-9月期の改定値では上方修正の見通し」という報道がなされていたのである。

■7〜9月期GDP、上方修正の公算 設備投資はプラス圏に浮上


内閣府が8日発表する2014年7〜9月期の国内総生産(GDP)改定値は、速報段階から上方修正される公算が大きくなった。同日発表の法人企業統計を受けて民間調査機関の多くが設備投資をプラス圏に上方修正した。在庫寄与度も若干の上方修正が見込まれる。

【日本経済新聞 2014/12/1 18:10 】

この上方修正予測の報道が出たとき、俺は「ええ?本当かなぁ?なんか上がる要素あるんかいね!?」と半信半疑だったのだが、まあちょっと待てば公式数字が出るんだから、見てから判断しようと思ってとりあえずスルーしていた。


で、実際にフタを開けてみたら冒頭の「下方修正」となったわけだ。


ここでJCASTが「またまた」といっているのにはわけがある。「アベノミクスその2」でも触れたが、11月頭に7-9月期の速報値が出される直前も、大手シンクタンクの名うてのエコノミストたちが揃ってⅤ字回復を予測する中、発表されたGDP速報値は2期連続の前期比マイナスを記録。

見事エリートたちが爆沈したという、底辺庶民にはちょっと痛快な出来事があったからだ。

実際の速報値はこっちね。


全滅である。


というわけで、とある方面では結構笑いものにされていただけに、少しは反省したのかなと思っていたら、全然反省していなかったんだね、という話。


とはいえ、今回の二次速報値が出されるにあたって、上方修正を予測したのには一応、それなりの理由がある。

日経新聞12/1の記事によると、

財務省が1日公表した7〜9月期の法人企業統計によると、ソフトウエアを除く全産業の設備投資額は前年同期比5.6%増の8兆6420億円。季節要因を除いて14年4〜6月期と比べると3.1%増えた。


俺もコレをみて、うーん、意外と設備投資は伸びてるんだな、と思っていたのだが、J-CASTの下方修正のニュースによると、

下方修正の主因は、設備投資の落ち込み幅が速報値より拡大したこと。GDP速報値では「鉱工業生産指数」と「生産動態統計」をベースに算出するが、企業の設備投資については、遅れてまとまる財務省の「法人企業統計」を加味する。


おいおい、言ってること違うやん。


経済評論家の三橋貴明氏の解説によると、法人企業統計は対象となるサンプルが大企業に偏る傾向があり、景気悪化の影響を受けやすい中小企業(そして国内企業の90%以上が中小企業である)の状況が反映しにくいため、こういう齟齬が出たのでは、とのことだ。


まあ、そういう背景もきちんと理解した上で、現在の状況をもっと曇りなき眼で見つめていれば、こういう恥ずかしい大ハズレを二度も連続して出すことはなかったんじゃないかと思う。エコノミスト、というと専門家でエリートで大先生というイメージがあるんだけど、わりとこの程度なもののようだ。



まあ、人間のやることですから間違いもあるでしょう。経済予測なんてそもそも当たるも八卦的なところもあるしね。
むしろこの状況下で楽観的な予測を出すというのはある意味勇気の要ることで、その蛮勇は評価してもいい。

で、とりあえず日経より敗者の弁をお聞きするとしよう。

背景には設備投資と在庫の推計が難しいことがある。設備投資は「売る側」にあたる鉱工業品の出荷と、「買う側」にあたる企業の設備投資の動きから推計する。出荷された製品を個人向け、企業向けと分類する作業は内閣府がする。内閣府は法人企業統計で調査対象の企業が変わる影響をならす作業もしており、これらを外部からすべて再現するのは難しい。
【日本経済新聞 2014/12/8 11:38】


みっともない言い訳だなぁ。そんな言い訳するんだったら、はじめから予測なんかしないで政府発表をおとなしく待ってればいいだろうに。ほんの数日前のことなんだから。


政府と民間でデータ量や処理能力に差があるのはしょうがない。でもそこを独自の情報とセンスとあとはカンでなんとかカバーするのがエコノミスト(笑)様のお仕事なはず。

「データが足りないのでわかりませんでした」で通るんなら、専門家なんていらんわ。


で、同じ日経の記事にある最後の捨て台詞が奮っている。

7〜9月の数値も、次に10〜12月のGDP速報値が公表される時からさかのぼって見直される。ある民間エコノミストは「結局は正解のない数値であり、GDPだけを見れば景気が分かるものではない」と指摘する。


いやいや、まずGDPが基本でしょ。その上で各項目を見てくのが普通。基本的にGDPが増えるということは経済の全体のパイが増えることであって、よほど過度でない限り、プラスなら良し、マイナスなら悪いと言い切って問題ない(実質GDPと名目GDPのバランスはあるけど)。

少なくともGDPの推移と実体経済の感覚に差異があるとは思えない。


っていうか、お前らは予測を大ハズししといて反省するどころか「GDPなんかあてにならんもんねッ!」宣言かよ。


もはや彼らエコノミスト(笑)は認知的不協和に陥ってるとしか思えない。

認知的不協和−「すっぱいブドウ」の理論(wikipedia)


キツネが、たわわに実ったおいしそうなぶどうを見つける。食べようとして跳び上がるが、ぶどうはみな高い所にあり、届かない。何度跳んでも届かず、キツネは怒りと悔しさで、「どうせこんなぶどうは、すっぱくてまずいだろう。誰が食べてやるものか。」と捨て台詞を残して去る。


【解説】

手に入れたくてたまらないのに、人・物・地位・階級など、努力しても手が届かない対象がある場合、その対象を価値がない・低級で自分にふさわしくないものとみてあきらめ、心の平安を得る。フロイトの心理学では防衛機制・合理化の例とする。また、英語圏で「Sour Grapes」は「負け惜しみ」を意味する熟語である。


是非、思い込みや願望を捨て、虚心坦懐、まじめに業務に励むことを薦めたい。


最後に日経の記事だが。

民間による予測平均を大きく下回ったことは、GDPの推計が難しいことだけでなく、足元の景気を映す指標としての限界も浮き彫りにした。

GDPの推計が難しいことはわかったが、「景気を映す指標としての限界」など全く浮き彫りにされておらぬわ。
おめーらが単にデタラメやって間違えちゃっただけだろ。GDPのせいにすんな!!


日経に至っては認知的不協和どころか精神分裂病の症状を来している兆候が見られる。
新聞作りなど精神に負担を掛ける仕事を続けていては命に関わる。一刻も早く業務を停止し、病院で診てもらうことを強くお勧めする。

アベノミクスの成果?? その6

さいご。

■女性の活躍

・女性の就業者数が約80万人増
 2600万人(2012年12月)→2735万人(2014年9月)


「その1」で雇用100万人増、という項目を検証したが、そのうち8割近くが女性だったということが明らかになっている。

つまり同じ数字を別の言い方に変えただけである。こういうのは粉飾・水増しのたぐいととられても仕方あるまい。ほかにもっと誇ることはなかったのか?

まあいい。ここではその女性の雇用についてもう少し見てみよう。

「その1」でも使ったグラフを再掲する。

やはり問題とすべきは正規雇用・非正規雇用の点だと思うのだが、上記の4半期ごとのデータによると、2012年10-12月期の女性の正規雇用は1047万人、2014年7-9月期は1038万人なので、約10万人減少している。一方で正規雇用は約60万人増である。

では、この時期に非正規として就職する女性とはどのような層なのか、とりあえず年齢層別のグラフでみてみよう。

傾きがわかりやすいように縦長にしたが、他意はないのでご容赦ねがいたい。
これをみると、34歳以下の若年層はやや減、35歳以上が増えている。自民党政権が始まる数年前からこの傾向にあるようだ。


一般的には、35歳以上の女性というと既婚女性である確率が高いと思われる。(2010年国勢調査では、35〜39歳の女性未婚率は23.1%)
この時期に非正規として働き始めた女性のうち、有配偶者がどれくらいの割合なのかは、もう少し別のデータと合わせてみないとわからないので、あくまで仮定の話だが。

男性の正規雇用が減っている半面で、中高年女性の非正規が増えているということは、「輝き」を求めているというよりは、生活費の足しにするためではないか、と考えるのが普通だろう。


24歳以下の若い女性の非正規がやや減っているのは肯定的に見ることもできるが、この年齢層は正規雇用も減少しているので、判断しずらい。

しかし、65歳以上の女性の非正規がかなり急に増えているというのはちょっと驚きである。
2012年10-12月期と2014年7-9月期で比較すると、この年齢層が+19万人と増加数トップなのである。これは何を意味するのだろう?

別に非正規雇用に輝きがないともいわんし、女性の正規雇用が増えればいいのかというとそれもなかなか難しいところである。なぜなら、GDPという全体のパイが増えないなかで、女性の正規雇用が増えるということは、その分男性の正規雇用の機会が奪われてしまう可能性が高いからだ。(事実、そうなっている)


女性の雇用については文化・慣習的なものもあるし、数よりも質という部分もあるので、なかなか評価が難しい。少なくとも、女性の雇用が100万人増えた!わーい!という問題ではないのではと思う。


どちらかというと、別に女性が会社で働かなくても主婦として十分やっていける社会のほうが、経済的な豊かさという点では勝っているように思う。
ま、この辺は価値観もあるので少々つっこみがたいところではある。

アベノミクスの成果?? その5

それでは、次の項目を見てみよう。


■海外インフラ

・日本企業の海外インフラの受注実績が約3倍
3.2兆円(2012年)→9.3兆円(2013年)


これも元ネタが不明。
2014年3月に内閣総理大臣補佐官がまとめた「日本再興戦略におけるインフラシステム輸出戦略」という資料の最後にその記述があるのだが、「内閣府「機械受注統計」等の統計値や業界団体へのヒアリング等を元に集計した」とあり、どうもはっきりした統計数字はないようなのだ。実際、受注金額不明分もかなりあるようである。


経済の指標というのは常に相対的なものである。その数字がいいのか悪いのかは、ある程度の時系列の傾向、他との比較、数字を構成する要素の内訳などを見ていかないとわからない。単に「9兆円」とか「3倍」などという数字に意味はないのである。


そこで、ある程度時系列的に海外インフラの受注状況の数字を取っている、「日本機械輸出組合」の資料を参照する。日本の主要なインフラ・プラント企業が加盟しており、網羅性としてはほぼ問題ないだろう。

この団体がまとめた最新の資料が「2013年度 海外プラント・エンジニアリング成約実績調査」である。


この資料によると、

1.総成約額・総成約件数
2013 年度の成約総額は、222.3 億ドル(対前年度比 11.2%減)となり、2005 年度以降、過去 6 番目の成約実績となった。成約件数は 639 件(対前年度比 0.2%増)となった。
本邦からの輸出額は、2006 年度以降では最も低い実績(93.7 億ドル、対前年度比 27.5%減)となった。


えっ!?減ってるの??

同ページのグラフはこのようになっている。


うーん。減っている。。。
むしろ、2006年以降で受注額最大となったのは、2011年度民主党政権時代だというのだ。


さすがにこういう数字で「ウソ」をつくことはないと思うので、いろいろ集計の基準が違うのだろうが、どうも安倍総理派手な外交パフォーマンスの割には、そんなに伸びてないんじゃないか?という疑念が沸く。

だから元ネタを明らかにしろ、と口をすっぱくして言っておろうが。


まあ、それはともかく。いちおう増えたということにしておこう。


海外インフラ受注というのは、輸出に相当するから当然、これが増えれば日本の利益になるわけだが、ことはそれだけではない。単なる商品やサービスの輸出以上に、日本の「安全保障」にも大きくかかわる重要性を持っている。

外国のインフラに日本が投資することによって、その国との結びつき、信頼関係が生まれる。実際にその国に利益をもたらすことができれば、我が国に対する態度も好意的なものになっていくことが期待できる。そして、やや戦略的なところでいえば、その国が日本の投資に依存するほどにまで至ると、国際社会において我が国の意向に対し反意を唱えにくくなる状況も生まれるだろう。


海外インフラ輸出は、日本の国際社会での地位を高める上で非常に重要な意味を持っているわけだ。


そのことを十分に理解し、戦略的にこれを進めているのが、まさに中国である。

経産省がまとめた平成24年4月の「海外インフラ・システム輸出の現状」という資料によると、日中韓の海外インフラ受注額の推移はこのようになっている。

もう、中国が圧倒的に伸ばしているのである。中国は、とくにアフリカ方面での受注額が大きく、2007年−2010年の3年間の累計で1,506億ドルは日本の20倍にもなる。

アフリカは人口こそ多くないが、50もの国を抱え、当然ながら国際会議ではそれぞれが1票を持っている。これらの国を味方にすることができれば、国連などにおける中国の発言力強化につながるであろうことは想像に難くない。
アフリカはほとんどの国が政情不安だったり治安が悪く、半分以上が独裁国家というのもあり、中国お得意の「袖のシタ」が使いやすいという事情もあるのかもしれない。


また、上記のグラフで驚くのは、日本は中国どころか、韓国にも劣後しているのである。日本はずっと200億ドル前後で横ばいを続けているが、韓国は中国ほどではないとはいえ、2010年で日本の3倍にもなろうという規模である。

日本機械輸出組合のデータでは、2013年は222億ドルと、2010年をさらに下回っているため、この中韓との差はさらに広がっているのではと思われる。
これはちょっと危機感をもったほうがいいかもしれない。


とはいえ、海外インフラもただ多ければいい・少ないとダメ、という単純なものでもないと考える。
中国はともかく、韓国は内需が圧倒的に少ない外需依存の国である。国内でやっているだけでは儲からないから、外国の需要をどんどんとりに行かないとやってけない国なのである。内需中心で貿易依存度の低い日本があまり海外インフラに熱心でなかったのも、その辺が理由としてありそうだ。
あまり海外インフラに注力しすぎて、日本が外需依存体質になってしまうのも、これまたまずい。ここはバランスも考慮する必要があるだろう。


ただ、上記のように海外インフラ輸出は国際社会における自国の地位を高め、安全保障に寄与するし、何しろ日本と敵対関係にある中韓がこれをどんどん進めている状況にあって、日本もこの競争に加わらないのは、将来にわたる安全保障の弱体化を招きかねないわけであるから、これからはどんどんリスクをとって海外インフラ受注を伸ばしていかなければならないだろう。
とりわけ、日本の得意分野であるエネルギーに関しては、国内での原発の新規建設がサヨクどもの妨害のせいで当分見通しが立たないので、海外受注によって技術を維持するという意味もある。


また、海外インフラ受注時には財政投融資による円借款なども活用される。つまり日本のカネが行って来いで日本企業に支払われるわけで、政策的な景気対策としても意味があるだろう。なんせ、国内のインフラにカネをつぎ込もうとするとメディアや各方面から「バラマキ」だの「箱モノ」だのと難癖をつけまくられるのだ。なぜか海外インフラに関してはそんな風に言われることはないのが不思議だ。


あれ・・・?財投債、増えてないな。もっとカネださんかい!!


安倍政権になってから海外インフラ受注がどれほど増えたのかについてはどうもはっきりしないとは言え、いちおうやる気はあるようなので、方向性としては頑張って欲しいと思う。



最後に一言だけ付け加えたい。
海外インフラ受注に向けるその熱意を、国内インフラ投資にもちょっとは向けてもらえないものだろうか…?

アベノミクスの成果?? その4

さて、四つ目の「観光」について考察する前に、このブログを読む方(数人レベルではいると思われる)に注意事項を。


ここんとこ連続でアベノミクスの成果」について批判をしているが、別に安倍倒閣運動をしようとか、自民党を選挙で落とそうとかいうつもりでやっているわけではない。選挙期間中なのでそこは誤解のないように願いたい。

単に、この2年間の安倍政権を通じて実現されたこと、されなかったことをデータから読み解いて、本来のぞましい経済政策の方向性とは何だったのかを考える材料としたいだけだ。

俺は基本的に「金融緩和+財政出動という意味でのアベノミクスには大賛成なのである(第三の矢はイラネ)。ただ、現実に実行されたアベノミクスは、俺が期待する意味でのそれではなくなってきていることが問題だと考えている。ま、そこについてはまた気が向いたら改めて書くかもしれない。



前置き終わり。批判モードにもどる。


■観光

・2014年4月には、旅行収支が44年ぶりに黒字化


ふーん。
「旅行収支」とは、日本人が海外で使ったカネを「支払」、外国人が日本国内で使ったカネを「受取」に計上して収支計算したものだ。(旅行運賃は除く)

これがアベノミクスにより黒字化した。つまり儲かりました、ということなのだが、それではデータを見てみよう。


財務省が公開している国際収支のうち「サービス収支」時系列データを使用してグラフ化してみた。


・・・なんのことはない、旅行収支の赤字幅の縮小は20年も前からつづく長期トレンドであって、それが今年の4月、ついに黒字に達した、というだけのことである。


いままで下落傾向にあったトレンドが転換し、上昇基調に変わった、というのならばそれは「成果」と言っていいのだろうが、これを見る限り、はっきり言ってアベノミクスほとんど関係ない。おそらく、民主党政権のままでほっておいてもじき黒字化しただろう。

こういうのを「成果」としてあげるのは、ちょっとズルいんじゃないか?


そしてもう一つ問題がある。
そもそも、「旅行収支の黒字化」が何を意味するかである。


もちろん、黒字化自体は悪いことではあるまい。
外国人が日本にきて沢山お金を使う。儲かる。日本が外国人にとって魅力的な旅行先として選ばれる。観光地には活気や潤いをもたらすこともあるだろう。

しかしこれは収支の話であるから、片方が増えた反対に片方が相対的に減っているということである。すなわち、日本人の海外旅行だ。

80年代からの出入国者数の推移をみてみると、

政府観光局統計資料より作図


日本はバブルの好景気に出国者数がうなぎ登りになったが、その後横ばいとなっている。
一方、入国者数は一貫して伸び続け、リーマンショック東日本大震災により大きく落ち込んだものの、翌年すぐに回復してトレンドは崩れていない。


当たり前のことだが、日本人が裕福になれば海外旅行者は増えるし、余裕がなくなれば旅行は控える。出国者数の推移は日本の景気を示す指標の一つでもあるわけだ。


また、日本人の海外旅行者があまり増えていないのに、訪客数が増えるということは、経済成長において他国に遅れをとっている、と見ることもできる。

それは出国者数だけでなく、一人当たりの旅行収支支払いをみてもその傾向は顕著だ。

第一生命経済研究所のレポートに掲載のグラフを引用するが、


節約志向の高まりによるものか、2009年から支払額が大きく落ち込みを見せている。

「旅行収支の黒字化」という現象は、日本人の貧困化という、よろしくない問題を意味している疑義が濃厚なのである。


さらに、同じ第一生命経済研究所の資料によると、日本人の出国者数を年齢層別で見ると、30才以上の中〜高年層はおおむね増加傾向にあるが、29歳未満の若年層は、96年のバブル崩壊ごろから減少を続けている。


つまり、近年の日本人の海外旅行の傾向は、若年層の貧困化・高齢層の富裕化という格差の拡大をも示唆しているのである。


「旅行収支の黒字化」は、日本が儲かっていることを意味しており、それ自体は悪いことではない。しかし、「なぜそうなったか」を背景や時系列を含めてみてみると、実はちっとも嬉しくないのである。日本人旅行者の数も支出も増えるなか、それ以上に訪客数が増えた、という状況になって初めてプラス評価ができるだろう。


こんな微妙な数字を、(しかもアベノミクス効果によるものと判別しがたいものを)誇らしげにアベノミクスの成果であるように掲げるというのは、どう考えてもよろしくない。

こんなものを出して国民が「おお、黒字化か!すごい!安倍ちゃんGJ!」なんて喜ぶと思ってやっているとしたら、相当に国民をバカにした話である。もしそうでないとしたら、よほど他に出すネタがなくて苦し紛れに挙げただけ、としか考えようがない。


少なくともドヤ顔して誇るようなものではない。
悪いことは言わない。恥ずかしいからこんなもの引っ込めろ、と教えてあげたい。