エコビジネスも悪くない その1

「dot.」というサイト(AERAの電子版?つまりアカヒの系列)に、こんな記事が載っていた。

■悔しさバネに30年 手製の発電所作った女性


 もう国や電力会社だけにはまかせておけない。将来のエネルギー供給を担う市民の取り組みを追った。

 その冬の日の宝塚の空は、どこまでも晴れ渡っていた。市内の北部、中心街から車で30分ほど走った山間部にある耕作放棄地。非営利型株式会社「○○発電」は2012年12月、ここに手作りの太陽光発電を完成させた。

http://dot.asahi.com/news/domestic/2015012800120.html


「手製の発電所とかいうから、あたかも自転車かなんかをギッコンバッコン漕いだり、水車小屋かなんかでも作ってつつましくやってるのかと一瞬錯覚させるが、何のことはない、ただの太陽電池パネルを使った小規模な発電事業者のお話である。

この記事、とにかくつっこみどころが盛りだくさん過ぎてもはやどこからつっこんでいいのか迷うほどのデカい釣り針なのだが、ヒマなので釣られてみようかと思う。



さて。

1個20キロはある敷石150個を一つ一つ並べ、その上に51枚の太陽光パネルを敷き詰める。パネル同士を固定し、配線をつなげば完成だ。パネルの総面積は約100平方メートル。要したのは5時間だった。

 同社代表取締役の■■さんが、専用モニターをのぞき込むと、液晶画面に発電量を表す数字が並んだ。パネルに降り注いだ太陽光が、確かに電気に変わったことを示していた。それを見て、思わず叫んだ。

「見ろっ、やったった。(自分たちで)電気を作ったわ


言っとくが電気を作ったのは太陽光パネルを作った業者さんであり、パネルは紛うかたなき工業製品である。
あんた方は組み立てしただけでしょーが。これをもって「手作り」などというのは、筆者の日本語能力を疑わざるを得ない。
普通、ラジコンカーを組み立てるのを手作りとは言わない。

 京都精華大学の階段教室。18歳の■■さんは期待に胸を膨らませていた。大学生になって初めての授業が始まる。「自然科学概論」。教壇に立った教員のXXXXさんは、おもむろに蛍光灯を消した。薄暗くなった教室でXXさんは学生に言った。
「私は原発に反対しているので、昼間に余分な電気は使いません」


精華大ねぇ。。。よくは知らないけど、京都のアート系大学か。偏差値は。。まあいいや。
それにしてもちょっと昔のことのようだけど、相当なサヨク汚染が進んでるらしき悪寒を覚える。まあ、京都ってもともとそっち色は強いしね。

しかし、こんなのにオルグされちゃって、以来お花畑人生を歩み続けてきたこの女社長さんも相当なもんだとは思うけど。

悔しさを行動に変えたのが、■■さんの30年間だった。市民団体で、高額な講演料にもためらわず一流の研究者を呼んで学び、原発反対運動があればどこへでも駆けつけた。共同購入の仕組みを使って、原発立地地域の漁業者や農家の産物を買って支援した。その延長線上に、ようやく自分たちの発電所が完成した。そうした時を経たからこそ、「見ろっ、やったった」というあの叫びが出たのである。


「高額な講演料」というが、この女社長氏が自弁したわけではあるまい。
それに、原発地域の農漁業者の産物を購入して支援した、ともいうが、何しろこの人たち、市に放射線量測定器を購入させて給食を定期的に測定させるほどなのだが、ちゃんと食ったんだろうな?

ま、それはいいけど、なんだか昔からずっとこつこつ積み上げて、ようやくここまで漕ぎつけた、みたいな美談に仕立てているが、ウソとはいわんが相当盛ってるな。


この発電施設を作った、「非営利型株式会社・○○発電」という業者(以下A社)のホームページに沿革があるのだが、


1981年に団体を設立してから30年、ほとんどこれといった実績もないのに、2011年の福島原発事故をきっかけに一気に具体的な動きが始まっていることがわかる。

なぜか。答えは簡単で、2011年3月11日、震災のドサクサに紛れて閣議決定され、同年8月に菅直人内閣が自らの退陣と引き換えに強引に成立させた「再生エネルギー特別措置法」によって、再エネ発電事業が「確実に儲かるしくみ」になったからである。


この法律の最大のポイントは以下2点。

  • 再生可能エネルギーから作った電気を、国が定めた単価で、一定の期間、電力会社が買い取ることを義務化する(全量固定買取)
  • この際の買取に必要な費用は、電気の使用量に応じて全国民(個人、事業者)が負担する。


つまり、太陽光パネルなどを使って作った電気は、需要と関係なく作ったら作っただけおカネに変えることができるようになったわけである。しかもその買取価格は、驚きの最大42円/KWhである。


この買取価格がどう驚きかというと、試しに東電の家庭用電力料金表の従量価格部分で比較してみよう。


一般の小売価格は、1kWhあたり19円程度が相場なようである。


つまり、「再エネ法」による買取制度は、小売の倍以上の値段で売ることができるわけだ。こ、これはオイシイ。。。


A社は、この法案が成立するやいなや即座にパネル設置に動き、2012年12月には第一号発電所を稼動しているから、この最高条件が適用されている。たしかに、30年もチャンスを待ち続けた意味はあったといえる。


で、当然逆ザヤが発生するわけだが、その差額はどうすんのかというと、もちろん「再エネ法」に定められたとおり、電力を使用するすべての個人・法人から「再エネ発電賦課金」として広く浅く徴収されている。ほぼ税金みたいなもんである。



要するにこのA社は、再エネ法というオイシイしくみができたのでこれ幸いと乗っかって、うまくやっているに過ぎない。再エネ賦課金制度によって全国民から集められたお金をチューチュー吸い取っているわけである。


このビジネス感覚、行動力は評価していい。実際、このオイシイ話を逃すまいと、目ざとい人たちは各地の山林などを切り開いたり借りたりして、個人で太陽光パネルを設置するのが一時期ブーム(今もかな?)になっていた。


ああ、俺もやっとけばよかったかも。。。いや、もとい。



別に法に触れているわけではない(どころか国が奨励している)ので、うまく制度を利用してビジネスするのはなんら問題ない。

ただ問題は、こういう再エネ事業者たちが得ている利益が、実際にその生み出す価値に見合ったものかどうかという点である。


長くなったので続く。