読書メモ

核燃料サイクル−エネルギーのからくりを実現する−(ERC出版、藤家洋一・石井保)

福井県高速増殖炉もんじゅが4月5日で1994年の初臨界からまる20年を迎えたそうだ。が、それとは関係なく、前から興味のあった核燃料サイクル技術についての本を借りてみたもの。
イデオロギー的に汚染された原発論(えてして脱原発論となる)はいいから、とりあえず技術的なところを知りたかっただけである。

これを読むと、現在の原子力による発電システムは、本来であれば全体の核燃料サイクルの一部分であるにすぎないことがよくわかる。本当はサイクルを完成させるための再処理、再利用の部分をつくらなくてはならないのだが、それがうまくいかないため、仕方ないから取り急ぎ発電部分だけ先にやっておいて、排出された再処理原料(廃棄物とはいわない)をしばらくの間保管している、という状態なのだという。

高速増殖炉を使用することによって、投入するよりも多くの燃料を引き出すことができるというのは、普段目に見える物理現象の範囲でしか理解が及ばない自分にはいまひとつ腹に落ちないところがあるのだが、なんにせよ、実現すれば本当に夢のエネルギー
世界のエネルギー問題の多くを一気に解決してしまう可能性があるということはわかった。

で、そんな可能性を秘めたこの技術、なかなか実現にいたらないのはなぜだろう?というのが俺の最大の疑問点だったのだが、この本は基礎的な考え方を説明するのみで、残された課題や越えるべき障害、これまでの経緯の問題点といったところには触れられていない。

うーん。そこを知りたかったんだけどな。
平易に書かれてはいるのだが、なかなか一度で理解するには難しい本ではあった。



■世界経済を破綻させる23の嘘(徳間書店、ハジュン・チャン、田村源二訳)

以下はこれから読む本。

アメリカのウォールストリートデモ、ギリシャやスペインなどユーロにおける経済破綻といった昨今の世界経済の状況は、「ぐろーばる経済」なるものの問題点を次々に明らかにしてきているわけだが、未だに日本をはじめ主要国のリーダーたちは、「ぐろーばる化」「自由貿易」「規制緩和」などといったフレーズに固執し、問題をさらに深めていっているように思えてならない。

そうした「ぐろーばりずむ」的な思想があたえるいわゆる「常識」について、著者はひとつひとつ、真っ赤な嘘であると切り落としていく。


・市場は自由でないといけない  
 →嘘。自由な市場など存在しない。

・株主の利益を第一に考えて企業経営せよ
 →嘘。株主を重視する企業は衰退する。

市場経済では誰もが能力に見合った賃金をもらえる
 →嘘。賃金を決定するのは政治的な力だ。


こんなかんじ。思うに、新自由主義グローバリズムというのは、いわゆる「経済学」という理論上の世界において生まれた考え方であって、これを実際の人間社会に反映させるには、現実はあまりに混沌としすぎているのではないだろうか。

なかなか面白い。やはり「ウソ本」にはずれなし。



東京スカイツリー(R)公認 634の魂 (徳間書店磯達雄

スカイツリー開業よりまもなく2年が経とうとしている。俺は何度か近くまで行って見たことはあるのだが、残念ながらまだ登ったことはない。
カミさんが高所恐怖症だとか何だとかで、一緒にあがるのを嫌がるのだ。

まあそれはともかく、図書館の建築関連棚にあるめぼしい本はあらかた読みつくしてしまっていた俺の目にとまった、新しい本だ。

東京スカイツリーの建築過程をさまざまな写真で追いながら、その構造上の工夫、担当者の苦労などを軽いノリでまとめた本。専門的な内容もあるが、関係者の生の声をたくさん紹介し、また綺麗な図版や写真が紙面の大半を占める構成で、絵本のように楽しく読める。
そして何より、ところどころにさしはさまれたアホなマンガが暑苦しくていい。



書いてあることは至極まじめなのに。。アホなマンガで台無しである。

このノリ、嫌いじゃない。