読書メモ

■やさしく読み解く はじめての古事記日本文芸社、板坂壽一)

旧皇族竹田恒泰氏の著書で「事実と真実は別。真実としての日本の歴史をきちんと知るべき」との議論があって、それならばとまずは古事記を読んでみることにしたもの。とはいえ、古文書ということもあってあまりに無味乾燥なものは挫折しかねないので、図書館でいちばん易しそうなのを選んで借りてみた。
内容はよくまとまっていて楽しく読めた。日本は本当に、神話から始まっていつの間にか歴史になっていく、不思議な国なのだなぁと思いを新たにするわけである。

一つだけ、とても印象に残る節があった。
日本武尊が東征を終えて帰る途上、都を目の前にして詠んだとされる歌である。

やまとは くにのまほろば たたなづく あおがき
やまごもれる やまとしうるはし

青々とした山と緑に抱かれる美しい都の情景を通して、ふるさとを思う気持ちがこの素朴な歌に深く込められている。千年以上を経ても、国を慕う思いに違いはないのだなぁと感じさせる。とてもいい歌だと思う。
太古の昔の人が、いまとそうかわらない「日本語」を使っているというのもうれしいことだ。翻訳するまでもなく、当時の言葉や思いが理解できるというのは、実はすごいことだと思う。


■地図&図解 なるほど!古事記日本書紀廣済堂出版、島崎晋)

古事記の世界に入門するにあたって、文章だけではなかなかとっつきにくいかなと思い、合わせて借りたもの。
図解で登場人物の関係などが把握しやすく、日本書紀との記述の違いや異説なども紹介されており、セットで読むと非常に効果的である。
ともかく、神代の世界というのは非常に人間くさくもあり、一方で人間世界では考えられないメチャクチャも平気でありえるものだと面白く感じた。
古事記日本書紀を記した当時の人はどのような思いで神代の世界を描いていたのか、興味は尽きない。


■「古事記」神話の謎を解く かくされた裏側(中公新書、西條勉)

古事記シリーズ第三弾。まずは古事記の表面をさらっと捉えた上で、その裏側にも踏み込んでみようと思ったものである。
もとより歴史とは相対的なものであるから、天武天皇の命で編纂されたこの歴史書も当然ながら政治的な影響を多く受けている。というか、いかに天皇の権威が正当なものであるかを説明付けるために編まれたのがこうした記紀なのであろう。
そのために、天つ神とは異なる体系で地域に崇められていた国つ神たちの扱いをいかに一本の神話の中にとりこんでいくか、というところに腐心した形跡があるというのである。
日本の歴史は実に謎が深く、真実はいくつもあるというのがまた面白い。