読書メモ

・日本人はなぜ日本のことを知らないのか(PHP新書竹田恒泰

この人の前著「日本はなぜ世界で一番人気があるのか」は買って読んだ。まっ赤っかだった俺が愛国保守に目覚めるきっかけとなった本と言っていい。
この本は竹田氏が最近書き上げた、日本史の正しい理解についての指南書である。
前半は日本の歴史教育の問題点、歴史学と考古学の違いと役割、我々が理解すべき歴史とは何かについて語られるが、後半はそうした見地にもとづいて実際の中学校向け歴史教科書を書くとしたらこうなる、というモデルが示されている。
ちょど日本の歴史について、学校で習うようなどうも上っ面を滑っているだけの知識でなく、きちんと「ルーツ」として理解したいと思っていたところだ。
もちろん、それには「古事記」「日本書紀」というれっきとした歴史書があるので、それらを読み解いていけばいいのだが、さすがにちょっと難しそうで、なんか簡単そうな解説本から入ってみたいなと思っていたところに、この本を見つけた。
というか、youtubeで竹田氏が紹介しているのを見て早速図書館で借りてきたものだ。

後半は期待通り、記紀の要点をわかりやすくまとめた上に考古学など科学的な見地も加え、なかなか興味深い内容になっていて、俺が子供のころに使っていた教科書よりよほどまともに見えた。

「日本っていつできたの?」という問いに事実で答えることは非常に難しい。しかし真実はきちんと示されている。日本の歴史の勉強を始めるとっかかりとしてはとてもいい本だったと思う。


白州次郎−占領を背負った男(上・下)(講談社文庫、北康利)

類まれなハードネゴシエーターとして敗戦直後の占領期に活躍した白州次郎の生涯を綴った評伝。まだ読んでいる途中である。
妻の白州正子も有名ではあるが、俺はどちらもほとんど知らなかった。彼らの名を知るきっかけは、ある携帯会社のCMで彼らをモチーフにした登場人物を使い、彼らの名を貶めている!という批判が某掲示板や保守系ブログなどでしばしば目にしたことによる。
まあ、破天荒なキャラとはいえ現代の官僚である。坂本竜馬織田信長みたいに敵をバッタバッタ切り倒してドーン!と社会をひっくり返す、とか派手なことをしたわけではもちろんない。
むしろひたすら裏方で、吉田茂をはじめとしたメインプレイヤーを押し立てていくという人物であったようだ。しかも占領期のことである。彼がいかに優秀で強い心を持っていようと、占領軍という巨大な力の前にはどうしようもないことばかりである。それでもなお、日本の矜持を失うまいと戦った彼の事跡はとても興味深い。
この本を途中まで読むだけでも、占領後の日本の姿、占領軍の性格、日本国憲法の成り立ちについて、今までの自分のイメージとは随分違うものが提示される。
国と国との戦争で負ける、とはかくも残酷なことなのだなぁとしばしば思い知らされる本である。