読書メモ

高橋是清井上準之助〜インフレか、デフレか(文春新書、鈴木隆
失われた10年」はいつの間にか「20年」になろうとしている日本経済。そんななかで、にわかに(一部で?)脚光を浴びている高橋是清。彼の事跡についてはいろいろ気になっていて調べてみたかったのだが、小難しい本が多くてなかなか手が出ないでいた。
そんな中でみつけたこの本。
高橋是清井上準之助という、同時代を生きた天才とエリート。生まれも育ちも対極的な二人の俊才が、戦前の日本経済をどう舵取りしてきたかを対比しながら描く本。読みやすいし面白い。

井上ほどの知性を持ちながら、なぜ日本経済をデフレに突き落とす「金解禁」に踏み切ってしまったのか。それは当時の世界中にあった「雰囲気」によるところが大きいようだ。冷静に考えればそんなことしたらダメだってわかるだろうに、でも世界中の潮流がグローバリズムに突き進む中、この流れに乗り遅れてはならじと金解禁を断行する。
なんだか今の状況も大してかわらんなぁ。優秀な人物ほど、時代の潮流や固定化されたイデオロギーに一度はまってしまうと却って道を誤ってしまうことがあるのだなと感じる。彼は彼なりに信念を持ってやった。後知恵でそれが間違いだったというのは簡単だが、その当時自分がいたとして、彼の論に意を唱えることができただろうか?

一方高橋は、そんな「流れ」とは一線を画し、あくまで国民経済の視点から金本位制脱退に踏み切り、デフレ不況脱却に成功する。相当の抵抗があったようだが、国民の支持を背景にこれを成し遂げた。彼自身の魅力的な人柄も大いに寄与したことだろう。

たとえ間違っているとわかっていても、「流れ」に逆らうことはとても難しいことである。まずは「本当にそっちでいいのか?」と疑問を持つこと自体がなかなかできることではない。さらに周囲が皆この「常識」に染められている中で、いかにそれを打破していくか。そういう能力と気概を持つものこそ、政治家として相応しいだろう。

この20年不況の世の中、平成の高橋是清は一体生まれ出てくるのだろうか。


放射能と理性 なぜ「100ミリシーベルト」なのか(徳間書店、ウェード・アリソン)

放射線被爆とその影響をどう考えるか。そこに閾値はあるのか。なかなか難しい問題ではある。
この本は、放射能とは何か、核分裂とはどういうことかという物理の基本的なことから、なぜ人は放射能の恐怖におびえるのか、情報はゆがむのかについて解き明かしていく。
でもただでさえ難しい内容に加え、翻訳なので文章がなじまないのか、どうも頭に入ってこない。最後数十ページを残してタイムアップしてしまった。


・日本人としてこれだけは知っておきたいこと(PHP新書中西輝政

久しぶりに本を買った。といっても狙って買ったわけではなく、たまたま入ったブックオフで100円で売ってたらかポイと買ってみただけのもの。
まだ読んでいる途中だが、日本の「戦後レジーム」はいかにして形作られてきたか、どこでゆがめられているのかを「大東亜戦争」「天皇」「占領政策」などのポイントにわけて解き明かす。わりとタイムリーな話題といっていいだろう。
文章はなかなか読みやすく、面白いので最後までいけそうである。