読書メモ

今週は3冊借りてみた。
本を読むよりiphoneを弄っている時間のほうが圧倒的に長い昨今、はて、読めるのかどうだか。

無宗教こそ日本人の宗教である(角川oneテーマ21、島田浩巳)

宗教は一体何のために存在するのか。最近気になっているテーマの一つである。宗教は人を幸せにするのか。カルトに嵌って自身のみならず周囲の人間も不幸にする者がいたり、戦争やいがみあい、分裂や一方的な虐殺の歴史にも宗教が少なくない役割を果たしてきた。「大航海時代」には宗教が侵略や搾取の協力な道具ともなってきた。これといった宗教を信仰していない俺にとっては、「ってか、宗教いらなくね?」と中学生レベルの認識からあまり先に進んでいないのも事実である。
ひとつ思いつくのは、宗教というのは現世の不合理と理不尽と矛盾と不可知の領域を埋めるために存在しているのでは、ということだ。どんなに科学が進んでも解明できない不可知の領域は存在する。生まれつきの不幸、納得のいかない不平等はどんな世の中にも存在する。そうした文明の力ではいかんともしがたい世の中の問題を、神や仏という絶対的存在の力を借りて無理くり説明付けるのが宗教の役割ではないか。
とすると、比較的文明度が高い社会、法治がいきわたり秩序が守られ、個々人の互いの信頼によって成り立つ社会ほど、宗教の必要性は薄れるのではないか。日本に無宗教者が多い理由はここにあるのでは?なんて漠然と思っている。
じゃあ同じく無宗教の多い中国は高度文明社会なのか、といわれるといやあ、そんなわけないよなぁ。ほぼ100%の国民が宗教に属しているイギリスは野蛮な土人国家か、んなわけねーだろ、と俺の仮説は無残に崩壊してしまうわけだが。まあ、そういう面もあるんじゃないかなと。
ちなみに世界各国の信仰の分布はこちら

そんなわけで、じゃあ宗教って一体何よ、という疑問に答えてくれそうな本をピックアップしてみた。「宗教とは何か」的な本はいろいろあるのだが、どうも各宗派の教義についての説明ばかりなものが多いので、もう少しテーマを絞って、日本人の無宗教について(我々が本当に無宗教なのかというのも疑問を抱くべきだが)語るこの本を選んだわけである。


・「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?〜世界一わかりやすい経済の本〜(扶桑社新書、細野真宏)

youtubeで、この著者がテレビ番組で年金が破綻するなんてウソだ!と居並ぶ民主党議員を論破しているところを見て興味を持った。まあ、いわゆる「ウソ本」の一種である。
今国会では一体改革がうんちゃらかんちゃらとやっているわけであるが、そもそも年金ってどうなの、という点はきちんと押さえておかないといけないなぁとは思っている。
この本はその年金について思う存分語ってくれるのかと思ったのだが、どちらかというと著者が推奨する「数学的思考」を身につけるための例題の一つとして、年金問題を挙げているにすぎない。まあ、字が大きくて半分以上イラストという、およそ装丁のイメージとはかけ離れた内容で、読みやすいといえば読みやすかった。
それにしてもこの人は字が綺麗ですなぁ。うらやましい。


・あなたの年金生活は崩壊する!−しのび寄るインフレの恐怖(あ・うん、太田晴雄)

上の本で「誰が言った?」なんていうので、どうやらこういう人が言っているようだ、ということで合わせて借りてみた。2004年だから小泉内閣中盤頃の本である。
読んでいる途中だが、まあ実に見事なまでのかぐわしき破綻信者的偏執狂的煽動的ファンタジーのオンパレードで、なかなか面白い。こういうタイプの人を俺は「ハタニスト」と呼ぶことにした。「サタニスト(=悪魔崇拝者)」と語呂が通じていてなかなかいいネーミングだと思っている。
この本も、年金について語っているのかと思ったら、メインはそうでもないようだ。要するに2003年末にそれまでのデフレ傾向が変化し、インフレの兆候があらわれたことをとらえ、「これからはインフレだ!生活が破綻する!」と煽っているわけである。
デフレの怖さがだいぶわかってきた今となっては、インフレ?いいぞもっとやれ、的な感想しかないわけだが、まあ確かにデフレからインフレの転換期には資産の持ち方とか、人生設計についてもいろいろと方向転換していかなきゃいけないのかもしれない。
もちろん筆者が予想するインフレはやって来ることなく、10年近く経ったいまだにデフレまっしぐらの状況である。まあ、こういうのは相場の予想と同じで、当たりもあればハズレもあるし、それをもって筆者が無能であったなどと断ずるつもりはさらさらない。
さて筆者のハタニズムは国の財政破綻論にも及んでいる。もう2005年には国家破綻、国民の預金は封鎖され、ハイパーインフレで全ての資産は霧消する、なんてきらびやかな文字が並んでいて目がチカチカする。そういえばこの人の「預金封鎖」という本も以前読んだことがあった気がする。しかしいくらなんでも2年後とは時限設定が厳しすぎないか。
でもこういう本、きっと書いてるほうも楽しいんだろうなあ。