読書メモ

ヒトラーの経済政策−世界恐慌からの奇跡的な復興(祥伝社、武田知弘)

ヒトラーといえば、いわずと知れた悪逆、暴虐、虐殺と狂気で世界を恐怖と地獄に陥れた最悪の独裁者というイメージがほぼ一般的であり、俺もだいたいそんなもんだと思っている。
だがこの本は、そうした彼の醜い部分はさておき、冷静に経済政策の面からヒトラーナチスの事跡を掘り起こしてみようとしたものだ。
まだ読んでいる途中だが、なかなか興味深い内容である。基本的にナチスの政策のいい面ばかりを並べているせいもあるだろうが、今までナチスに対するイメージが真っ黒であっただけに、目を覚まされるような点も多い。
何しろ第一次大戦の敗戦による賠償金負担、失業、ハイパーインフレ、財政危機に世界恐慌と、どん底まで落ち込んでいたドイツは、わずか敗戦の20年後に再び強大な軍備を整え世界を席巻するまでに国力を急回復させたわけだ。ヒトラーがただの権力ボケの独裁者でなかったことは確かだし、少なくともその政権は民主的な手続きにより成立したものである。

ナチスが台頭した当時ほどではないにしろ、日本も今非常に難しい状況にある。それをどう乗り越えるか、このドイツの事例は大いに参考にしてよい部分が多々あるのではないか。
(まあ、ほとんどが「日本じゃここまでやるのは無理だろうなぁ」という政策ばかりではあるが。。)

植えつけられたイメージだけで決め付けせず、今の価値観だけで判断せず、当時の視点に立って事実を捉えることが重要であると感じさせる一冊である。面白い。


■基本を知る−放射能放射線誠文堂新光社、藤高和信)

ホットな話題の本を借りてみた。著者はJAXA宇宙線被爆に関する研究をしている人らしい。字が大きく、内容の半分以上は図版なのでとても読みやすそうな本である。
俺は福島原発事故による放射能汚染に関しては、今のところあまり気にしていない。なにせタバコは吸うし酒も呑む、ラーメン二郎も大好きな不健康生活を送っており、いまさら放射線ごときの健康被害をうんぬん言う気はあまりないのだ。
が、まったく気にしていないというわけでもなく、「実際のところ、どうなの?」ということを知りたいとは常々思っている。
放射線被爆健康被害に関してはいろいろな情報源があるわけだが、「全然問題ない。むしろ体に良い」派と「すぐ死ぬ!絶対死ぬ!未来永劫祟る」派のギャップがあまりに大きく、どっちが本当なのかさっぱりわからない上、いずれの派についても何らかのイデオロギーに汚染され、冷静に科学的な議論になっていないのではと思うことも多い。
結局、現状としては「本当のところはまだ良くわかっていない」というのが事実なんじゃないかと思う。だからイデオロギーの入る余地があるわけだ。
そんなわけで、今回はできるだけ冷静に、専門家(評論家ではない)の立場から語られていそうな本を選んでみた。2011年7月発刊の本であり、もちろん福島原発事故についても押さえられている。