読書メモ

・公共事業が日本を救う(文春文庫、藤井聡

予約していた本が届いたので、早速借りてきた。
反TPPで名を馳せた中野剛志氏のボスということもあり、最近はネット動画でも積極的に論陣を張って保守派に人気のあるお方。90年代以降、ほとんど「常識」のようになってしまった「公共事業悪玉論」を覆すべく、統計数字やさまざまな例を引きながら解説している。
2010年10月が初版だが、この約半年後、あの大震災が起こり、残念ながらこの書物で指摘した懸念が実現してしまったわけだ。
藤井氏のいいところは、「ほーら、だからいわんこっちゃない」なんて一言も言わず、今も一切ぶれずにこの本の意図することを伝えようとするところ。
それにしても、この人は本よりも実際にしゃべっているのを聞いたほうが全然面白い。


・首相公選を考える〜その可能性と問題点(中公新書、大石眞他)

こっちは今読んでいるほう。「維新の会」がその公約の一つとして掲げた「首相公選制」について、まあ、一度考えたほうがいいかなと思って借りてみた。
ろくすっぽ勉強もしていない現時点では、「首相公選!?バカ言うな、冗談じゃない」というのが俺の感想。マスゴミ捏造報道ポピュリズム、ショックドクトリン的な煽動により国民の意思は容易に誤った方向へ傾きがちなことを考えると、よりその傾向が強く出やすい「首相公選制」および首相への権力集中は非常に危険であると感じている。
国政では民主が政権をとったが、内閣および総理大臣が議会の信任の下に成り立っており、強権の発動を抑制していることが、極端で偏った政策の実行を阻止している。同じく「維新」が提案している「一院制」にしてもしかりだ。2010年の参院選で民主が惨敗していなかったら、いまごろ恐ろしいことになっていたかもしれない。
すくなくとも戦時中でもない現在において、政治に求められるのはドラスティックな変化や既存秩序の破壊ではなく、安定かつ着実な政治の運営であると思っている。その意味でトップが替わるたびに方向性が右に左に大きくぶれたり、今まで積み重ねたものがぶっ壊されかねない首相公選制には反対、というのが俺の考えだ。
この本は小泉首相が設けた本課題に関する懇談会を通じて提示された課題について、委員たちが論考する内容となっている。読んであまり面白い本ではないのだが、まあひととおり状況を確認しておくのは悪くあるまい。