エコビジネスも悪くない その3

長くなったが、面白いのでさらに突っ込んでみよう。


この事業者は発電施設を2箇所運営しているようなのだが、そのうちの第2号が面白い。

■○○発電所 第2号

“緑の中の太陽光発電所”
兵庫県の補助事業「県民まちなみ緑化事業」を利用して、太陽光発電設備を設置する敷地内の一部(西側3m×60m)を緑化しました。
敷地内全体には防草対策としてクローバーを植えています。

http://takarazuka-sumire.com/?page_id=69


どんな場所かというと、HP上に記載されたマップによるとこんなところだ。



恐らくはお寺が所有する山林の、住宅地に隣接する一部を切り開いて太陽光パネルを設置したのであろう。


・・・っておい待て。君たちは税金使って緑化事業とかやってるが、もともとそこは緑豊かな木々生い茂る里山であったかに見えるが???


説明によると西側に緑化を施したという。幅3mだから木一本分くらいしかない。
恐らくは木々を伐採して黒いパネルを置いたところ、景観が悪くなったり照り返しなどがキツくなって付近の住民の不評を買ったので、目隠しの木を植えたのではないか・・?


と思ってGoogleマップで調べてみたら、最近の航空写真があった。



造成前後を並べてみると事情が納得できる。


もともと草地で木も多少あった空き地を均してそこにパネルを置き、住宅との境界に木を植えたわけである。


いや待て。…まさか、とは思うが、このパネル設置用の土地を整備するカネに、緑化事業費(つまり税金)が流用されている、なんてことはあるまいな??

なぜなら、木を植えるのは造園業の仕事だろうが、土地を整備するのは全体として同じ土木業者がやるだろうからである。幅3mの緑地化部分のみ、別会計にしてそこの部分についてだけ補助金をもらう、なんて律儀でめんどくさいこと、普通するだろうか…?いや、俺ならしないね。


ま、それはあくまで疑念に過ぎないのだが、何れにせよ、自分とこのビジネスのために緑を刈り払って環境破壊しておいて、その穴埋めに税金を使うというのは、道義的にどうなのよ?という気持ちは拭うことができない。



さてこの第2号地のスペックだが。

設備費:18,000,000円
1.年間平均予想発電量:52,668kWh
2.年間売電収入:2,106720円+税(@40円/kWh+税)
※2012年7月から実施された全量固定価格買い取り制度を利用
3.借地代:120,000円/年
4.土地賃貸借契約期間:2013年11月〜2033年10月(20年間)


なるほどねぇ〜。


とりあえず維持管理費は別として上記の数字だけで見てみると、だいたい10年位でモトがとれて、残りの10年は年200万ガッポシ、っていう計算になるのかな。


まあなかなかそうウマくも行かないだろうとは思うが、ここと同様、太陽光発電ビジネスを始めた個人の体験記などを読んでみると、概ね想定通りのガリを得られているケースも少なくないようである。


メンテナンスに関しても、それほど大規模な施設でもないし、日常の掃除や点検程度なら自分たちで十分できるだろう。


なにより、「善意」「エコ」「社会貢献」の名の下に集まったヒマな年寄りや主婦を労働力として活用可能であり、維持のために必要な人件費も、一般企業などと比べてかなり有利にできる可能性が高い。

ここがそこまでやっているかどうかは知らないが、うまくやれば「儲かるしくみ」を最低限のコストで活用することも可能なわけである。


ところで気になったのだが、土地の借用期間FITの適用期間と同じになっているようだが、固定買取期間が終了したらどうなさるおつもりなのかな?
店じまいしてもいいけど、解体費用や産廃の処理費用もちゃんと積み立てておいてくれることを願う。


さらに面白いのは、このA社、市の太陽光パネル推進事業の窓口業務も請け負っているようなのである。

市がタダで業務を外注するわけない(収賄にあたる)から、当然相応の委託料は受けているはずである。もちろん法的にも道義的にもなんら問題はないが、さすがに30年も雌伏の時をかこっていただけはある。行政という絶対安心なパトロンとがっちり組んで口銭を稼ぐ体制まで完備している。これは見事という他ない。



最初のAERAの記事のイメージからすると、有志が手弁当でお金もバックもないなか細々とやりくりしているようにも感じてしまうが、HPを軽く見ただけで、なかなかどうして、見事に制度と行政を活用し、歴としたビジネスモデルを構築していることがわかる。つまり、税金や補助金を合法的に吸い上げるシステムである。おそらく雌伏の30年間、この時のために政治や行政との信頼関係をつくり、ネットワークを構築することに励んできた結果であろう。


買取制度の行き詰まりによって「太陽光バブル」の崩壊も囁かれる昨今であるが、やるならここまでやれ、ということかもしれない。


ちなみに電力会社による固定買取制度の新規契約は徐々に縮小傾向にあるようだが、制度当初からすでに契約を結んだこうした業者は、何があろうと今後20年間の買取(しかも契約当時の高価格のまま!)が保障される。


もはや再エネバブル崩壊など痛くも痒くもないわけで、出遅れて貧乏くじを引かされた後発業者たちを鼻クソほじって見ていられる立場なわけである。

これこそ早い者勝ち、勝ち馬乗りの典型例である。こりゃスゲェ、と思っていまからマネしようとしたって無駄なのであしからず。


まだある。