海岸林再生ボランティア その1

今年も会社主催のボランティア活動に参加した。

別に社会奉仕に目覚めたわけではないのだが、何しろ会社のカネで旅行ができて(費用分の税金は引かれる)、普通ではなかなか得られない経験ができ、そこそこ同行者との交流もある、ということでメリットは大きいのである。

ああ、一応お役にも立てますしね。



ボランティアのテーマはいろいろなのだが、今回は震災復興支援として、東北大震災で根こそぎ流されてしまった仙台付近の「海岸林(クロマツ林)」の再生事業に参加させてもらうことになった。

宮城は子供のころに八幡平に家族旅行で行って以来。ほぼ初めての地である。
出発前の俺は既に植林よりも牛タンのことで頭が一杯であった。

新幹線で仙台に向かい、前泊することになっていたので早速近場の牛タン屋で地元の名物を味わう。


うーん。確かにウマかったけど。牛タンは牛タンやなぁ。
ま、一応地元にも貢献したということで。



宿舎で前泊ののち、いよいよ仕事に入る。
仙台空港付近(名取市)にあるクロマツの育苗所に向かったわれわれは、この地で地元民と一緒になって海岸林再生に取り組むNPO団体より、活動趣旨の説明を受ける。


育苗所はこんなふうになっている。これは最近になってヨーロッパの技術を取り入れて進めているコンテナ苗のエリアだ。環境に強いクロマツや、比較的安いアカマツマツノザイセンチュウなどの虫害に強いものとそうでないものなど、目的や植える場所によっていろいろな種類がある。


これでだいたい2年目だったか3年目かな。1年ごとに節がつくので、1年でどれだけ生長したかが見ればわかるのである。


こちらは昔ながらの方法で地面に直接苗を植えて育成する方法。どうもコンテナ苗のほうが成績がいいため、費用はかかるがこれからの育苗は基本的にコンテナで統一する方針になっているそうだ。


ちなみにこのあたり一帯は、震災のときの津波で根こそぎ流されてしまったエリアである。民家や畑もあったようだが、ほぼ全て壊滅して当時のものはほとんど何もない。


海岸がすぐそこなので、土壌はほとんど砂である。大雨でも降ったら即流されてしまいそうなのだが。



さて、苗の説明をひととおり終え、作業場に向かう。
作業場は海岸に建設された防潮堤の内側に沿うように、幅数km、奥行き2,3百mくらいで延々と盛り土された海岸林の造成現場である。


とりあえず防潮堤にも登ってみましょうか、ってことで7.2mのコンクリの壁にアタックする一行。
もともとここには防潮堤もあったのだが、ただの壁みたいな構造だったので津波のエネルギーに耐え切れず、完膚なきまでに破壊されてしまった。新しい防潮堤はその経験を踏まえ、なだらかな三角形の形で強度を高めている。


防潮堤から海を臨む。
地元の人はやはりトラウマからか、まだまだこの海には近寄りがたいそうだ。


防潮堤から海岸林の造成場を見渡す。今も盛り土の作業が懸命に行われている。




見物はこれくらいにして、いよいよ作業場に入る。


3mくらいの高さに盛られた盛り土場の間を進む。盛り土場は30mⅩ100m位の大きさでブロック状に分けられており、その上に防風柵で囲われた植林場がしつらえられているという寸法である。


盛り土の上はこんな感じ。
砂に覆われた決して肥沃とはいえない地面の上に、ウッドチップが撒かれており、その中に1m間隔くらいでクロマツの苗が植えられている。
ウッドチップはもちろん、この地にかつて生えていた松の木材を破砕したものを再利用している。


本日のお仕事は、苗の生長度を確かめるためのデータ取りである。全高および去年からの生長差分、そして幹の太さをノギスで測る。たいしたことはない作業だが、かがみ込んでメジャーの値を読まないといけないので、なかなか腰にくる。




一通りの計測を済ませたところで、一旦NPOのベースキャンプに戻ってお昼にする。


会社支給の弁当はなかなか豪勢なものだ。



午後は天気が怪しいため、遠出はせずに育苗場のコンテナ苗から雑草抜きの作業をする。


コンテナの土は柔らかい上に湿っているため、小さな雑草ならニュルッと簡単に抜けてしまうのだが、


たまにこういう主人を押しのけて繁茂するずうずうしい奴がいる。根っこが広がって土をがっちり掴んでいるため、しっかり押さえて抜かないと土ごと(そして松の苗ごと)ボッコン、と取れてしまうので気が抜けない。

慎重に作業をするため、意外と力が要る。指先だけが疲れてしまった。


作業の甲斐あって、すっきりしたコンテナの中で存分に光を浴びる赤ちゃん苗たち。
これで大体2,3ヶ月くらいのものだ。
だんだん愛着が沸いてきた。しっかり育てよ!


つづく。