さよなら、安倍さん。

来年四月からの消費税60%アップがついに決まってしまった。

心底、残念でならない。

安倍政権発足以来、TPPにしろ、構造改革にしろ、靖国にしろ、不満な政策、物足りない部分はいろいろあったが、それでもこのデフレを脱却し、経済を成長に導いてくれるのならと、我慢してきた。

そういう態度が安倍信者だったのかな、といえばその通りかも知れない。

巷ではこの増税安倍vs財務省増税の闘いであったという見方もあるが、俺はそうは見ない。

首相が本当に財務省と戦うつもりがあったのなら、増税決定前に次々と外堀を埋めて行くような報道に対し、一言「しかし現状のデフレ下での増税は難しい」と発言するだけで、流れを変えることもできたのだ。

しかし首相は「まだ決めてない」とはいうものの、それらの勇み足報道を否定するでもなく、事実上放置することで自ら増税への流れを作っていった。むしろ、10月の増税決定の際、市場へのインパクトを少なくするために情報を小出しにして行ったと見る方が正しいだろう。何しろ、首相と読売新聞をはじめとするメディアは度々会食の場をもって意思疎通を図っていた。なんらかの阿吽の呼吸があったであろうことは想像に難くない。

結局、安倍首相は最初から増税するつもりだったのだ。もちろん、もとより彼は増税に反対していたわけではない。しかし「デフレ脱却」を最重視するスタンスから、少なくとも来年の増税については当然延期の判断がされるものと思っていた。
何しろ、「まずはデフレ脱却。そうすれば税収は上がって行く。それでもたりなかったら、仕方ない、増税をお願いする。とにかく増税はデフレ脱却してから!」といろいろな場で度々訴えてきた麻生氏とタッグを組んだのだ。よもやこのような判断ミスを自ら犯すとは思えなかった。

政治家が選挙やその前に訴えてきたことを、選挙が終わった途端翻して真逆の事をしてしまうとは。これでは「消費税は三年間、議論すらしません」と言って政権を盗った民主党と何ら変わらない。

では去年の衆院選、今年夏の参院選の投票行動により、この増税の方向性を変えることができたかというとそれもまた疑問だ。何しろ消費税増税を真っ向から主張していたのは共産党だけだったのだから。勝負はやはり、増税法案が可決した時点でもう、決まっていたのだ。


さて、着実に復活への道を歩もうとしていた日本経済は、増税決定により来年四月以降、いきなりハードモードに突入することになる。黙ってりゃそのまま景気回復できたろうに、とはもはや繰り言に過ぎないが、そうは言っても我々は生き続けていかねばならぬので、もうこれまで通り、真面目に働くしかない。生活防衛も個人レベルでは考えていかないといけないだろう。
とりわけ、8%のあとは更に10%への増税がその翌年にすぐ控えている。消費税増税による消費の抑制効果は、一般には数年である程度落ち着くものと考えられるが、今回は小出しの増税二度も頭を押さえつけられるのである。むしろ来年の8%よりも、このことのほうが問題だ。首をもたげるたびに頭を叩かれてしまっては、もはや立ち上がる気力すら失いかねない。

首相は「成長と財政再建は両立する」といった。そこからまず認識が間違っている。「成長なくして財政再建はできない」のである。更にいえば、財政再建など別に慌ててする必要はないし、そもそも日本は財政危機などではない」のである。

だがまあ、成長する、と首相が言ってるんだから、このハードモードの中で一体どうやってそれを実現しようというのか、お手並み拝見である。よもや、特定大企業の利益ばかり増やして全体のGDPが増えたと言って、「はい成長しました」なんてことになるまいな。いや、すでにその兆候は見え始めている。

安倍政権にはアジア重視の外交や、金融緩和など、いい面もある。だがもうこの政権を支持することはないだろう。個別の政策につき、是々非々で対応して行くのみである。もちろん、はなからそうすべきであったのだが。

これまで、「デフレ脱却と戦後レジーム脱却」という二つの大きな目的のために、個別の事案への不満はぐっと堪えてきたが、もうその必要はない。
彼らがまたちょっとでも変な動きをしようとするなら、遠慮なく叩かせていただくことにする。


ありがとう。


そして、さようなら。