読書メモ

放射線測定のウソ (マイナビ新書、丸子かおり)

久々のウソ本シリーズ。とはいえこんな題名ながら、特定の放射能に関する虚偽的言説を糾弾するようなものではなく、単に「正しい放射線測定器の使い方」ガイドブックである。書名にダマされたが、まあそれはそれでいい。

放射能放射線についての基礎的知識も説明されており、その部分は平易でとてもわかりやすい。
いろいろな測定器ごとの注意点、できることできないことが書かれており、あまり興味はないのだが知っていて損はないだろう。少なくとも、「放射線測定機能付き携帯電話」なんて怪しげなモノを掴まされる恐れはなくなる。

だが肝心な所が抜けていると思うのは、正しい測定方法で正確な数値を得たとして、それをどう評価するかという点である。放射線の人体に与える影響には諸説あってなかなかはっきりとは言えない部分でもあるのだろうが、単に周囲より高い値がでたからといって即死ぬ、というものでもなく、取った数値を冷静に判断するための考え方、というのは外してはならないと思う。

筆者自身、「とんでもない数値が」とか「数値がはね上がる」というような感情の混じった表現を所々に使用している。その数値がどうとんでもないのか、はね上がるとはどの程度上がることをいっているのか、そういう考慮なしに言葉だけを見ていると、せっかく正しく測定した数値も結局周囲の不安を煽るためだけに使われてしまい、それは筆者の望む所ではあるまい。

ただ、筆者の基本スタンスとしては放射能、即・危険という決めつけをしようという意図はないようで、この辺は学者ではないライターという筆者の立場からは仕方のない所なのかも知れない。