読書メモ

■一目でわかる「日中戦争」時代の武士道精神(PHP出版、水間政憲

支那事変、いわゆる日中戦争時代の日本軍の姿や、特にその勢力下にあった支那の市井の様子を写真資料を中心に紹介した本。

アカから脱した俺ですら、日本と支那は当時全面戦争の状態で、町もめちゃくちゃになっていたのではないか、というような漠然としたイメージがあったのだが、ここに示された資料をみるだけで、そうしたイメージはかなり事実に反したものであったらしいことが明らかになる。

日本軍が制圧した支那の各都市は平和と秩序を取り戻し、人々は商売や日々の生活に精を出す。住民と日本軍人の和やかなふれあいもそこかしこでみられた。

日本軍は孤児を保護したり、診療所を作って住民の生活回復に務めていた。それに対し、支那住民は五色旗と日の丸をうち降って日本軍を歓迎する。あの南京入城の直後においても、である。

西洋列強の植民地を開放した東南アジアと違い、支那大陸に関しては「侵略」の誹りを受けるのも止むを得ないのでは、という思いが実はあったのだが、こうした資料を見るにつけ、支那事変というものの性格もかなり違って見えてくる。

支那事変における日本軍は、今でいうPKF(平和維持軍)に近かったのではないか。あの当時、国民党はすでに支那全土を国家として掌握しておらず、共産党との戦いもあって大陸は内戦が広がる無政府状態であり、そこに居留していた日本国民はもちろん、支那人民にとっても強い日本軍が来てこの状態を収めることを歓喜していたのではないか。

写真が残すものは間違いなく事実である。ただ、それは必ずしも真実ではない。ある意味非常に一面的に切り取った事実に過ぎず、却って真実を覆い隠してしまう危険性もある。しかし事実も見ずに想像だけで物を語るだけでは、真実にたどり着くことはできない。

真実が如何にあるかは、これからもいろいろな資料をみて判断して行く他ないが、その出発点として、まずこの本で自虐史観に塗れた固定観念を崩しておくのはとてもいいことだと思う。