麻生の変節!?

何だか来年4月からの消費税増税はもう、避けられないんじゃないかという情勢になってきている。まだ首相自身はその態度を明らかにはしていないが、次々と外堀を埋められ、10月1日の発表の日に大ドンデン返し、なんてことになったら、却ってその方が大きなショックを及ぼしそうなところまで追い込まれている状況である。

まだ最後までわからないし、あきらめてはいないが、もしこのまま行ってしまうとしたらとても残念だ。

もともと安倍総理の経済政策については若干の不安はあった。TPPにしても以前から基本的には推進の立場だったし、官房長官時代に著した美しい国へ」には、どちらかというと新自由主義な匂いも漂う危険性も感じていた。総理就任後は「第一の矢」はともかく、「第二の矢」もおざなりなまま、構造改革まっしぐらの「第三の矢」に進もうとしている。
しかしそれでも俺が安倍自民党を支持したのは、彼自身が「デフレ脱却」を第一に掲げていたこと、そして何より金融緩和と財政出動のパッケージでデフレ脱却を目指す麻生氏が強力なバックアップに立っていたからだ。


ところがおかしなことに、その麻生氏が最近は真逆の発言をするのをしばしば目にしている。麻生氏は野党時代の講演やインタビューで何度も増税はデフレを脱却してから」と繰り替えし訴えてきた人だ。その麻生氏が、今や完全に財務省の代弁者となって財政再建国債発行の抑制を求めるような発言をしているのだ。まあ、財務大臣なんだから財務省の立場で物を言うのは当たり前かもしれないが、この180度の方向転換は全く理解不能である。


なんでこんなことになったのかなぁ。。と遠くを見るようなまなざしで、俺はあの冬、秋葉原での自民党街頭演説のビデオを取り出してみた。

そこでの麻生氏の発言はこんなものであった。

我々は今、政権奪還を目指していますが、あくまでも手段です。
我々が政権を奪還して、一丁目一番地でやらなければならない、そう思っているのは何と言っても景気です。その、景気対策をやらねばならん



しかし、みんなそう言うが、この20年間、我々は不況というものに戦っていましたが、この不況は今までの不況と違って、資産のデフレーションによる不況。我々はこういうデフレ不況というものを、昭和20年、戦争に負けてこのかた67年間、一回もやったことがありません。したがって、デフレ不況対策、いうものもわかりませんでした。率直なとこです。


しかし考えてみてください。奥さん方も例えばスーパーで大根一本100円が95円に下がったら、あら安くなったわねぇ。次の週になったら91円になってんだ。あら、また下がったわ。悪くないでしょうが。そう思ってたろ?間違いなくみんなそう思ってたよ。物価が下がってくんだから。しかしそれがずぅっと続いたら、農家の大根を作ってる人の売り上げが減り、スーパーの売り上げも減り、廻り回って皆さん方の旦那の給料も下がり、そして会社の売り上げも減って、倒産。それがデフレ不況というものの根本です。


したがって、このデフレ不況から脱却するために何をすればいいのか。我々はこの3年間いろいろ考え、いろいろな地域を廻り、いろんな人の知恵を借りて、結果として我々が出した結論は、やらなければならないことが三つある。
一つ。日本銀行による金融の緩和です。しかし金融を緩和しただけでは日本銀行のお金が○×信用銀行に行って、□△信用金庫に行くだけで、カネはそっから先に散ることはありません。なぜなら、お金を借りに来る人は銀行が貸したくない人が借りに来るんだから。貸したい人は借りに来ない。したがって銀行からお金が散らない。したがって、銀行からそのお金を散らすためにはどうすればいいかといえば、財政の出動が要るのです。財政再建ではありませんよ。財政の出動です。



例えば、財政出動いろいろありますが、財政の出動が上手くいかなかった例。例えば子供手当て。子供の手当てをもらった人は間違いなく嬉しかったろうよ。しかし、その子供手当てをもらった人が子供のために使ってくれればいい。子供のために貯金されたら。何の経済効果も生まないでしょうが。したがってエコポイントを思い出してみてください。エコポイント。あの時は、やった時にはボロカス言われましたよ。なぁんだこりゃあと、えらい文句言われたよ。しかし、あのエコポイントをやった時に総額7,000億円使ったんですが、あの7,000億円の財政出動をした結果、少なくとも、テレビ、エアコン、冷蔵庫、等々。そういったものが大量に売れて総額4兆9,500億円売れました。そして雇用は、32万人の雇用が確保されたんだ。したがって、財政を出動するなら、かならず経済効果があるものにせねばならん。これが二つ目です。


そして三つ目。経済は間違いなく、成長させていかねばならん。その経済を成長させるためには、今度は通産省経済産業省の出番ですが、経済産業省は間違いなく、経済の成長案をつくらねばならん。


思い出してみてください。昭和36年、ご年配の方なら覚えてるだろう。池田勇人内閣総理大臣だった時に、あの時に、高度経済成長の前、あの時に所得倍増計画を立てて、5年間。そしてその後佐藤栄作で7年間。合計12年間の間、日本は経済政策を立てて、その経済政策は間違いなく、最初は繊維、次に鉄鋼、次に造船、次に家電、次に自動車。間違いなく、政府と一体になったそういうものはどの産業も世界一になったんですよ。世界一の産業にのし上がった。間違いなく、我々は、資源もないこの小さな国が、みんなで働いて、みんなで頑張って、結果として世界第二の経済大国にのし上がったのは、政府と民間と、みんな一緒になってこの経済成長を目指したから。黙ってたら経済が成長するなんて時代じゃあないんです。


我々は今ここまで落ちた経済を、確実に立て直すために、今三つの政策を同時にやるためには、政治の力が要るのです。政治力が要る。その政治力を我々に与えてください自由民主党に与えてもらいたい。私たちは、そのお願いをここにやってきました。



我々はこの三年間、いろいろな反省を込め、多くの新人を発掘し、いろいろなところで多くの新人を選び出し、三年間、谷垣禎一が大いに頑張って、自民党を纏め、その後我々は開かれた政党としては、開かれた選挙をやり、安倍晋三を総裁に選び出し、そして、石破茂を幹事長にして、一体になってこの選挙を戦っております。いよいよになったら一緒になる。みんなで、意見が違っていても、一緒になって頑張る。それが自由民主党なり、日本のいいところでしょうが。


是非、今回この選挙、皆さんがたのお力添えをいただいて、自由民主党に力を貸してください。そして今申し上げたような、政策が確実に実行に移せるような、そうした力を、安倍晋三率いる自由民主党に与えてください。よろしくお願いします。ありがとうございました。


返す返すも見事な演説である。その通りだ!と今でも思う。財政再建ではありませんよ。財政の出動です。」彼はそうはっきり言った。俺はまさにそれをやって欲しいと思ったから、彼の呼びかけに答え、冬の衆院選、夏の参院選と二度の選挙で自民党にその「力」を与えた。

さあ、力は与えたぞ。あとはしっかりやってくれ、となったとたんにこれである。

あの時と経済情勢が変わったのか?それとも気が変わったのか?それとも麻生氏ははじめから嘘をついていたのか?

TPPについてはもともと明言はしていなかったとはいえ、どちらかといえば推進の立場であったから、残念ではあるがこれは言を違えたとはいうまい。
しかしこの消費税をめぐる議論について、麻生氏の立場が選挙の前後でこれほどまでに違うというのはどうにも納得がいかないのである。



人間、公の面前でそんなに簡単に嘘がつけるものなのか?


もしこのまま、増税を決定するようなことになってしまうのなら、まず麻生氏には選挙時に俺たちに向かって語った言葉をなぜ翻したのか、きちんとした説明を求めたい。

といっても、説明なんてしないんでしょうけどね。そういうところを衝くのはメディアの役目のはずだけど、もちろんマスゴミにそんな仕事は一切期待できない。


正式決定は10月1日だそうだ。その結果如何では、俺もいろいろ考え直さないといけないかもなあと思う。