総合火力演習2013 行ってきた! その2

現場に着いたのは午前2時半頃だったが、すでに数百人ほどがシートやテントを並べて行列を作っていた。

困ったのは、入り口が座席の種類ごとにいくつかあるのだか、どの列がどこに並んでいるのか、真っ暗な中ではさっぱりわからなかったことだ。
ヘタなところに並んでしまうと、せっかくの苦労も水泡に帰す恐れがある。


自衛隊員らしき人が見回りをしていたので聞いてみた。
俺のようにハガキの一般券を持つ者は向って一番右奥のE席スタンドか、先着順でシート席につくのだそうだが、やはり列の最後尾ははっきりしないとのことだった。

並んでいる人の数やコンディションからシート最前列は最早難しいものと諦め、普通にスタンド席を確保すべく並ぶことにした。


列はE席入り口から右へ伸びて、ぐるりと折り返してきたところまでつづいている。

周囲の人に声をかけ、この辺で並んでいいのか聞いてみるが、やはり皆確かなことはわからないようだ。諦めて適当なところでシートを敷いて横になった。ざっと2〜300人目くらいのところには並べたものと思われる。


地面は粒の荒い砂場のようなところで、デコボコが少なく、レジャーシート一枚でも横になるのにさほど問題はない。

ただ、しょっちゅう小雨が降ったり止んだりするのと、暗い中いろんな人がライトを照らしてザワザワ歩き回るので、かなりの上級者でないと寝るのは難しいだろう。トイレも近くて便利だが、少し臭う。

屋台用のテントが張られているので、早く来た人はテントの下で雨露をしのぐことができたようだ。

借り物の寝袋を汚すわけにいかなかったので、フリースを着てそのまま横になった。雨は冷たいが、気温は23〜4度程度と思われ、さほど寒くはない。


スマホでビデオをみたりしながら開門の刻を待つ。
そうしている間にも後から続々と列に加わる人々がやってくる。もう最後尾ははるか遠くまで伸びているようだ。

4時をすぎる頃からようやく空が白んでくる。天気のせいで楽しみにしていた朝焼けの富士山は見えず。
行列周辺の人の往来もこの頃から慌ただしくなってきて、シートを引き上げて荷物を畳む人などがちらほら見えた。


朝5時頃になると、屋台に材料を持ち込むトラックが行列を押しのけて度々往来するようになる。
もはや寝ていられる状況ではなくなったので、俺も荷物をたたんで動ける準備をはじめた。


そして5:30頃、突然なんの前触れもなく行列がドドドと前に詰めた。俺は丁度トイレに行っていてこのタイミングを逃してしまい、何組かに先を越されてしまったが、なんとか整列に加わることができた。

開門はまだだが、前の方でスタッフが客を3列に整列させているらしく、自分の並び位置もズイ、ズイと前に詰めていった。


最終的な立ち位置はEスタンド真裏の右端あたりとなった。入り口までは50mくらいになるだろうか。

ここでまた暫く待つ。雨はしとしと降ってるし、座れないのでここまでの疲労と眠気が一気に襲ってくる。立ったまま膝カックンを3発ほどかましてしまった。

6時頃から、自衛隊員の会場整備が始まった。重機で整地したり、座席の水をブロワーで払ったりと忙しい姿がスタンドの骨組みから垣間見えた。


そして6:30。突然、


バキャァン!!


凄まじい轟音で眠気が吹っ飛んだ。
な、なんだこれは!


戦車による事前練習が始まったようである。爆音はもちろん、戦車砲の発射音である。


バッキャァン!


ある程度覚悟はしていたのだが、この音と衝撃は予想を遥かに超える。
花火をすごく近くでみたぐらいな感じだろうな、くらいにしか思っていなかったのだ。だが本物の大砲の音は、そんなものより遥かに暴力的で、無慈悲だった。


ガキャァン!


来る、とわかっていてもつい肩が竦み、目を閉じてしまう。す、すごい。ていうか、恐い…


大砲の発射音で既に散々にビビりまくりの俺である。蛮勇奮ってシート最前列なんて取りに行かなくて本当によかった、と思った。
本番はこれからなのに、俺は一体この衝撃に耐えられるのだろうか?と不安になる。


そして戦車の号砲と共に入場が始まる。スタンド席は後ろの心配がない最上段がベスト、とされているが、並びながら順番にブロックを埋めて行く方式のため、狙って最上段に座るのはほぼ不可能。
俺はEスタンド向かって右から2ブロック目の中断に腰をおろした。

席を定める間にも戦車の試射は容赦なくつづく。ビビりまくってる俺の醜態は、先にスタンドについた人々の衆人環視に晒される。


おい、しっかりしろ、俺!


座席はぎっちり詰めて座るので非常に狭い。しかも雨でびしょ濡れだったので、持ってきたシートを素早く敷き、その上に座布団がわりのエアクッションを置いて座った。

ところでこのエアクッション、1000円もしない安物だが、もしこれなかりせば、と思うぐらい助かった。必須アイテムの一つと言ってよかろう。


そのまましばらく試射の様子を眺めてみる。戦車のほか、自走榴弾砲、87式自走高射砲、そして俺のお気に入りの89式装甲戦闘車も次々とお目見えして、ドカドカと撃ちまくっている。

榴弾砲が並んでドドンと音がしたかと思えば、スタンド右手の広場に「富士山」型の爆発炎が見事に描かれた。これは本番では視界が悪くまったく見えなかったので、試射で拝むことができて非常にラッキーだった。


さて試射も終わったところで、買出しやトイレを済ませることにする。
一旦本番が始まったらほとんど席は立てないし、間に休憩もあるがどうせ人が殺到して移動もままならないだろうから、必要なものは開演前のこの時間に贖っておくのが正解である。

深夜に行列を作っていたエリアには屋台が所狭しと並び、いろいろなものを売っていた。とりあえず世話になった人にお土産を、とは思うのだが、この雨で既に自分のバッグなどはびしょぬれである。あまり買いこんでもダメになってしまう恐れがあったので、「ヒトマル饅頭(カスタード)」のみを買うにとどめた。
喫煙所も一箇所しかないので、この機会に思いっきり吸い貯めしておくことにする。


用をすませたところで席に戻る。
スタンド席はぎゅうぎゅうに詰まっており、前の席との間には足を置くスペースしかないため、自席に戻るには「すいませんすいません」と謝りながら他人の荷物をまたいで進むほかない。
雨ガッパは着ているものの、全身びしょぬれで気持ち悪い。こんな状態で狭いところに押し込められてさらに数時間待たないといけないのか、と思うと気が滅入ってきた。


まだつづく。