白神山地でボランティア 1

会社のグループが「白神山地植樹ボランティア」なるものを募集していた。

もともと興味のある植樹イベントに、しかも世界遺産白神山地へ会社のカネでいけるとあっては、これほどオイシイ企画はあるまい。全社で5名程度の募集だったから相当な倍率が予想されたが、運よく当選することができた。

作業用の長靴や軍手など、万全の装備を整えていざ飛行機で出発。土日を利用したわずか1泊の旅行ではあるが、非常に楽しみにしていた。



東京から青森とは雲烟万里の彼方のような気がするが、飛行機で行ってしまえばわずか1時間ちょっとである。なんだか拍子抜けした。

さてついてすぐ作業というわけではない。まずはふもとにある「白神ビジターセンター」でお勉強。ブナの生態、白神山地の森の様子などが大きな模型などを使って詳しく説明されており、なかなか面白い施設であった。



ようやく山に向かう。世界遺産として名高いエリアだが、実際に指定されているのは白神山地のごく一部のエリアだけである。われわれは山の入り口にあたるちょっとした谷間で作業をすることに。このへんは杉の人工林がおおく、植樹場所も元は杉林だったところを伐採してつくった広場のようだった。




まずは神事で作業の無事を神様にお祈りする。




次に記念植樹。代表者が協力して一本のブナの苗を植える。



そして世界遺産登録20周年を記念する標柱を立てる。



これらセレモニーを経て、やっと作業にとりかかる。セレモニー会場から20mほど登った丘の上に作業場所がしつらえられている。
ここは2,3年ほど前に既に植樹を行った場所で、俺たちの作業は下草刈である。柄の長い大きな鎌(めちゃ切れる)とヘルメットを与えられ、人の背丈ほども草が生い茂った荒地に踏み込む。



うっそうと茂る草たち。これを全部刈り払えという。10人程度でテニスコート2面分くらいが持ち場ではあるが、正直、これだけでも気が遠くなるような思いである。




それでも我々はスタッフの指導を受けながら、ひたすら作業に没頭する。「昨日はねー、蜂がでたから気をつけてね」なんて脅される。
どう気をつけたって蜂が出たらどうしようもない。



気をつけないといけないのは、ところどころに現れるリボンをつけた木。ブナのほか、ホオの木、山椒、青森ヒバなどが草むらのなかに隠れている。調子にのってバッサバッサなぎ倒してると、貴重なコイツらまで刈ってしまうので気を抜けない。

生えている草には柔らかいもの、ほとんど木みたいな太いもの、ツル性のものなどいろいろあってそれぞれ切るのにコツがいる。
とはいえ、やっているうちにだんだん掴めてきて、作業スピードは俄然アップしてくる。




道具を置いて一休み。天気も薄曇でコンディションはよいが、ハードな作業もあいまって皆汗だくである。



やれやれ、なんとか与えられたエリアを掃除し終わった。
あまり違いがわからないが、いちおう立っているのはリボンつきだけという状態になった。皆でエイヤッとやってしまえばわりと何とかなるものである。
仕事の結果が目に見えるのはなかなか楽しい。


下草刈の作業が終わると、参加者にブナの苗が配られ、指定された場所に植えることを許された。このへんの土は乾燥してカサカサ、木や草の根っこなどが蔓延っている上にちょっと掘ると石がごろごろしており、決して樹木の生長によさそうな環境ではなさそうに思えるが、ともかく一番良さげなところに植えた。



こいつがまともな木に育つまで、あと数十年かかかるわけだ。しかも今回のような下草刈などの手入れも欠かせない。
まったく、森を育てるてのは大変な仕事だと改めて感じた次第である。


つづく。