ジブリ美術館

知り合いに思いがけずチケットを譲ってもらったので、三鷹の森ジブリ美術館に行ってみることにした。

前から気にはなっていたが、時間指定の予約制ということで、なんかメンドクセーな、と思って二の足を踏んでいたものだ。


さて、もらったチケットは14時から14時半の間に入場しなければならぬとある。休日の午前中から家を出ることなどめったにないのだが、頑張って早起きして現地に向かうことにした。

井の頭公園では、「TOKYO GREEN 2012」とかいうイベントをやっていた。都市緑化フェアの一環とのことだが、木を植えるとかそういうことではなく、ガーデニングとか、アート的アプローチのものがほとんどだった。

しかし庭に花をこさえても、維持するのは本当に大変だろうなぁと、どうでもいい感想しか浮かばなかった。


さて本題のジブリ美術館である。


当然ながら結構な人の入りではあったが、さすがに入場制限の効果か、ぎゅうぎゅうというようなことはなく、わりと落ち着いて鑑賞することができる。

面白いのはやはり建物だろう。建物や中庭のいたるところに小橋や螺旋階段がしつらえてあり、空間を立体的に楽しむことができる。小人が通るような小さな入り口、ちょっとした隠れスペースのようなものもあり、たいして大きい施設でもないのに、歩き回っているだけで結構楽しめる。

図書閲覧室では、懐かしの絵本や、ジブリ作品の絵コンテ集などが手にとって読めるようになっており、つい長居してしまった。この部屋には是非椅子をたくさん置くべきである。

アニメの仕組みや、その製作現場の様子がわかる展示は興味をひくものだった。セル画ってどうやって撮影してるんだろう、と前から知りたかったのだが、撮影装置のミニチュアがあり、なるほどと納得できた。
ちょっと気になることがあって係員に質問してみると、みんな目を輝かして喜々として教えてくれる。。好きなんだねぇ。
それにしても背景画などのクオリティはすごい。アニメではすううっと流れて一瞬で終わってしまうようなものでも、1枚1枚が完全にアートといっていいすばらしい作品である。

聞いてみると、背景画1枚を描くのにだいたい3日から1週間くらいかかるそうだ。
むしろ1週間でこんな作品ができるのかと思うと驚きである。

ジブリスタッフの着想の元ネタとなる資料もいろいろ置かれている。大きなスクラップのアルバムには、おそらくイギリスで撮影したであろう、チューダー様式の住宅建築のおびただしい写真がまとめられていた。

特別展示も面白い。「挿絵が僕らにくれたもの」という題名で、1900年前後に発刊された童話集に収められた挿絵(木版画!)にスポットを当てて解説している。ヘンリー・J・フォードの作品を中心とした沢山の挿絵に一つ一つコメントがつけられており、これだけでかなりの見ごたえのある展示。
俺が挿絵として印象に残るといえば、やはり「アリス」のテニエルか、「ホビット」の寺島だろうか。他にもあるが作者は知らない。

挿絵といえば、一般的には本文では伝えきれない情景を与え、読者の想像を助けるものだと思っているが、フォードの挿絵は恐ろしいまでの描き込み、迫力となまめかしさで、存在感がハンパない。本文は読んでいないが、恐らく本文を完全に押しのけて読者に衝撃を与えていただろう。まあ、挿絵としては失格だが、作品としてはとても面白いものだ。
アールヌーボー的な有機的な曲線、過剰な装飾、かつリアルな描写が、幻想的でありつつ現実感をもって迫る効果を生み出している。

最後にジブリ作品の短編映画を見た。「パン種とタマゴ姫」というものだが、うーん。やはりハウル」以降のジブリの作画はどうも好きになれないんだよなぁ。背景と動画がマッチしていない感じがする。
ただ、その製作風景を見てきたあとなので、このたった12分の短編であっても、とんでもない労力と創意がこめられているんだろうなぁ、というのはわかった。
映写機が動いているところを覗けるのもいい。ニューシネマパラダイスのトト君の気持ちがわかったよ。


そんなわけで、せいぜい2時間も見れば十分かと思っていたが、たっぷり3時間以上も遊んでしまった。


あやうく見逃すところだったロボット兵。思ったよりデカイ。そしてひんやり冷たかった。