あやかし達の「三党合意」

「税と社会保障の一体改革」論議が大詰めを迎えているが、ここ数日の動きは権謀術数が渦巻くようで、はっきり言って「ワケワカラン」状態である。

とりあえずは、文書としてきちんと示されたものを確認して、判断するしかあるまい。

まずは、15日の民・自・公三党合意文書。民主党のホームページに掲載されている。最も注目すべきは、やはり消費増税の実施時期がいつになるかということだ。

○附則第18条について

・以下の事項を確認する。

(1)第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。

(2)消費税率(国・地方)の引き上げの実施は、その時の政権が判断すること。


実施時期については、石原幹事長の記者会見でも述べられている通り、実施前に政権が判断するとあるので、何年に決め撃ち、というわけではないようだ。ただ、「政権が判断」とあるので、国会の議決を必要としないことを意味しているのだろう。つまり、その時の内閣が「来年から増税ネッ!」と宣言しさえすれば、いつでも増税可能となると捉えるべきだろう。

さて、上記のとおり実施時期について合意文書には明記されていないが、これに関するほとんどの新聞報道は「14年8%、15年10%で合意」と書いているようだ。ん?どこにも書いてないのになんで?と思うのだが、よく考えてみればこれは政府提出の法案に対する修正意見についての合意文書なわけだから、修正を必要としない部分については書いてなくて当たり前なのだ。

というわけで、大元の政府提出法案を見てみることにする。これは財務省ホームページにある。

2.消費税法の一部改正

(1) 平成26 年4月1日施行(第2条)
 ○消費税率を4%から6.3%に引上げ(地方消費税1.7%と合わせて8%)。
 …
 ○課税の適正化(事業者免税点制度の見直し、中間申告制度の見直し)

(2) 平成 27 年10 月1日施行(第3条)
 ○消費税率を6.3%から7.8%に引上げ(地方消費税2.2%と合わせて10%

ありゃ、なんだ、はっきり書いてあるでねーか。

三橋氏のブログによると、

 さらに、税に関する合意ですが、どこからどこを見ても「2014年に8%、2015年に10%に消費税を引き上げる」という文言がありません。というわけで、上記のフレーズで報道したマスコミがあったとしたら、それは「ウソ」ということになります。

とあるのだが、うーん、書いてはあるのだから「ウソ」とは言えんな。ただ条件付というだけであって、いちおう趣旨を確認しました、程度の修正意見しかついていないと見るべき。どうした?三橋さん?


問題の「附則第18条」原案はこうなっている。

○消費税率の引上げに当たっての措置(附則第18 条)

・ 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23 年度から平成32 年度までの平均において名目の経済成長率で3%程度かつ実質の経済成長率で2%程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。

・ この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。

つまり、消費税増税の時期について、条件付であるのはもとからである。合意案の修正意見は、ある意味で原案よりもさらに条件を緩くし、誰が判断するかを明示した上、(経済状態にかかわらず)いつでも増税実施可能としたもの、と見たほうがよいのではないだろうか。なにしろ名目成長率の数値まで、「努力目標」とホネ抜きにされてしまった。


以上から判断するに、2014年8%、2015年10%増税は、ほぼ間違いなく実施されるものとみてよいと思われる。いくら条件付でも、既にここでホネ抜きにされた上、時の内閣の判断だけで実施可能なのだ。その時点の政権が自民であろうと民主であろうと、増税したくてしょうがない勢力がこれだけいるのだから、みすみす条文に明記された施行期日をダラダラ延ばすようなことをするとは考えられない。

小沢グループをはじめとする民主の増税反対派がいろいろゴネたりしているようだが、はっきりいってあの人たちの内ゲバ活動なんて、単なるポーズに過ぎないことは、「菅おろし」の騒動やTPPにまつわる一連の動きをみてさすがに理解した。
どんだけ騒いでも、結局党を割ったりするのはイヤだから何事もなかったかのように賛成することだろう。だから全く期待も注目もしていない。


今後の社会保障費負担の増大を考えると、国民負担率を上げていく必要があるというのはわかるし、その財源の一つとして実質GDPに比例して安定的な伸びが期待できる消費税を据えるというのは、まあ百歩譲って受け入れてもよい。
しかし、デフレ脱却もろくにできていないなか、そして世界経済が大混乱に陥りそうな中、消費税増税の期日だけ決めて「上げるぞ、上げるぞ。でももしかしたら上げないかも・・」なんて中途半端なことをされるのはちょっといただけない。とりあえず、精神衛生上よくない。
「よし、これからは景気も上向きそうだし、ちょっとお金つかっちゃおうかな」なんて前向きになれる方針を示して頂きたいものだと思っていたのだが。「どうせ増税されてまたデフレ深刻化は見えてるしなぁ」なんて思ったら、前向きにお金遣おうという気にはちょっとなれないなぁ。

まったく、難儀な世の中ですなぁ。。。



そして、話をさらにわからなくしているのが、合意成立後の自民・谷垣総裁の街頭演説。

自民総裁「法案成立後に解散を」 都内で街頭演説

 自民党谷垣禎一総裁は16日、都内で街頭演説し、民主、自民、公明3党で合意した消費増税関連法案の成立後に野田佳彦首相はただちに国民に信を問わないといけない」と述べ、早期の衆院解散・総選挙を求めた。

 消費増税に関して民主党が2009年の衆院選では掲げていなかったと指摘し「野田さんがやりたいのはやむを得ないが、マニフェスト政権公約)違反だ」と強調。民意を問い直す必要があると改めて訴えた。
日本経済新聞 6月18日】

野田ドジョウ氏が「政治生命をかける」とまで言って臨んだ「一体改革」法案の成立をここまで手助けしておきながら、解散を求めるとはどういうことか。どうみても野田政権の延命に手を貸しているとしか思えんのだが。。。
せめて合意の前提として、「法案成立後に解散する」ことを入れておくなら、まだわかるのだが、解散について首相の言質をとっていないのは確かなようだ。

言ってることとやっていることが違う、と思われてもしょうがないのではないか。一体、自民は何がしたいんだ?


三橋氏のブログに気になる文言がある

さて、自民党ですが、中の方に聞いたところ、とにかく「予算編成権」を取り戻さなければ、日本がこのまま衰退すると考えているようです。(民主党に任せていられない、という点については誰でも納得されるでしょうが)

 予算編成権を取り戻すとは、要するに政権交代という話ですが、そのためには野田総理に「解散」をさせなければなりません。

サラリと「予算編成権を取り戻す=政権交代と言って流しているが、じゃあ最初から政権交代と書けばよいのであって、あえて「予算編成権」という言い方をしているところがクサい

なぜなら民・自連立政権になれば、政権交代しなくても「予算編成権」は得られるからである。どうもこの方向に含みを持たせているように思えてならない。
ユーロ問題とか、直接関係ないところには明快な口調でバッサリと切って落とす三橋さんだが、こと自民の動きに関しては奥歯に物が詰まっているというか、歯切れが悪い上に擁護的に過ぎる。まあ、これから自民の公認をもらって選挙に立候補するために広告塔の役割を担っているのだから当然といえば当然だが。。。

それにしても民・自連立政権なんて。。まさかとは思うが、支持率8%とかいってる泥舟政党に乗っかって一体何の得があるというのだろうか?


次の選挙がいつになるかはわからないが、じっくり考える必要があるようだ。