世界のクロサワ

七人の侍を見た。

言わずとしれた世界のクロサワの代表作だが、気にはなっていたものの今までなかなか見る機会がなかった。
そもそも、俺が見たことのあるクロサワ映画というのが、昔TVでやっていた「八月の狂想曲」だけだったのだが、これが実につまらなかったという印象だったので、クロサワ映画を絶賛する声を聞くにつけ、「どうせみんながいいっていうから話を合わせてるだけじゃねえの?」とひねくれた見方をしていた。
半世紀以上前の白黒映画、ということでなんか小難しい感じじゃないかと思っていたのも、今までこの映画に近づかなかった理由の一つ。

しかし最近よく見る海外の翻訳ブログでこの七人の侍を外国人が絶賛するコメントを目にし、うむ、やはり日本人なら一度は見ておくべきかなと心を決めてDVDをかりてみたものだ。

さて借りてきてみると、何と二枚組3時間超の大作である。こりゃ手強そうだな、途中で寝てしまわないかと不安になった。しかしいったん始まってみると、いやはや、あまりの面白さに一気に引き込まれてしまった。

個性的で魅力的なキャラ、スピーディかつ緊迫した展開、リアルで迫力のある映像に、時間も経つのも忘れてしまった。なるほど、こりゃ絶賛されるわ、と納得いった次第である。

特に三船敏郎演ずる菊千代には登場時点からグッときてしまった。自分の出自にコンプレックスを持ちながらも、侍と農民の橋渡しとなり、戦場では剣技未熟ながらも体当たりで一生懸命に大太刀をふるい、そして誰よりも仲間の死に心を痛める、そんな人間臭くて愛すべき存在に、最後はすっかり「菊千代、頑張れー!」と応援したい気分になった。

見てからすぐにもう一度見たいと思った映画は久しぶりである。俺の記憶ではマトリックスか、もののけ姫以来だ。何しろ人物の所作や情景の一つ一つが練りこまれており、一度見ただけではとても味わい尽くせそうにない。

やれやれ、日本にはこんな面白い映画があったのか。これはカミさんにも勧めておかねば。
スカッとしてちょっと切ない、いい余韻を残してくれる映画だった。