いつもとかわらぬ退屈な朝。
遅刻ギリギリの電車に駆け込んだ俺は、ギュウギュウの車内で我が身を棒のごとく硬直し、不足した睡眠時間を少しでも補おうと、周囲からの圧力に抗っていた。
そこへ、真新しいスーツをぴしっと着こなした、幼い顔立ちの女の子が乗車してくる。
俺と同じくギュウギュウになっているその娘は、まるで象の群に迷い込んだ小ネズミのようにはかなく、たよりない。
なーんて見ていたら、その娘は、窮屈ななかバッグに手を伸ばすと、「社員就業規則」と書かれた小冊子を取り出し、真剣な眼差しで読み始めた。
いやぁ、春ですなぁ。